『大分複雑になってきたトルコのシリア侵攻』

2019年10月15日

  トルコがシリアで勝手な動きをするなら、アメリカは制裁する、とトランプ大統領が息巻いている。その意気持は分かるが、エルドアン大統領はトランプの弱腰を、十分に分かっている。トランプは何とか次の大統領選挙で、勝ちたいということで、口先でしか強いことは言えないのだ。

 EUもしかりであり、シリアなどの難民を、何百万人単位で送られたのでは、社会は大混乱となり、支援の資金も莫大なものになろう。従ってEUもトルコに対して、腰の引けた対応をしている。例えば、トルコに対する武器輸出については、制限をするという言い回しなのだ。輸出を止める、とは言っていないのだ。

 クルドのYPGSDFもしかりであり、アメリカ軍の支援は期待出来なくなったので、単独でトルコ軍と、戦わなければなるまい。その場合、やはりトルコ軍とクルドとでは、武器のレベルが大きく異なるだろう。加えて、航空兵器を有している、トルイコ側の空爆に対して、クルドには打つ手があるまい。

 シリアはと言えば、シリアもしかりであり、真正面からトルコ軍と、ぶつかる気はなかろう。そうしたなかで出て来たのは、クルド側から提案のあった、シリア・クルド合同軍で、トルコ軍に対抗する、という方法だ。もちろん、シリア政府はこの提案に、飛びついたようだ。

 それでもやはり、トルコは怖いのだろう。マンビジュでは早速に、トルコ軍とシリア軍が、対立することになっているが、どうなるのだろうか。シリア軍はクルドの支配地域までは、勇敢に進軍するのだが、その先はどうもそうでもないようだ。

 シリア北部のトルコ軍が、侵入した地域のそばまで、シリア軍は入っているが、攻撃を加える様子は無い。それでも一部では小規模な武力衝突が、起こっているようでもある。大オスマン帝国の亡霊が、エルドアン大統領に味方しているのであろう。

 さてこうしてみてみると、トルコの戦況は絶対的に、有利ということになるのだが、どうだろうか。これから予想されることは、幾つかある。それらはもちろん、トルコに不利に働く、という意味で考えてみた。

 まずトランプ大統領の言い始めている、経済制裁によるトルコへのダメージだが、トランプ大統領はトルコの鉄鋼に対する、関税を引き上げると言っている。また、トルコへの投資も削減していくことになろう。アメリカのマスコミを使い、アメリカの金融界と結託すれば、トルコへの投資はヨーロッパからもしぼもう。そうなると、やはりトルコにとっては、大ダメージとなろう。

 ロシアとの関係では、ロシアはやはりシリアを、支持する立場にあり、トルコ軍とシリア軍が衝突するようになれば、ロシア軍は放置できまい。その意味でトルコは、シリア軍だけではなく、ロシア軍との戦闘も、考慮しなければならない、ということだ。

 加えて、イランもトルコの見方にはなるまい。やはりイランの支援は、シリアに向かうだろう。そうなると,トルコはシリア、ロシア、クルド、IS(ISIL)、イラン、そしてアメリカを敵に、回さなければならなくなる、可能性があるということだ。これまで何度となく、第三次世界大戦の話が出ていたが、この戦争が第三次世界大戦の、小型版になる可能性はあろう。