イランの軍人を代表する人物で、世界的に知られているのは、革命防衛隊(IRCG)のスレイマーニ将軍であろう。彼はイラク、シリアでIS(ISIL)を相手に戦い、大きな戦果を挙げた人物だ。そのためアメリカやイスラエルからは、大分前から狙われていたようだ。
今回明らかになった、スレイマーニ将軍に対する暗殺未遂事件は、長期的な作戦であったようだ。350キロから500キロの爆弾が用意され、彼の事務所もろとも、灰燼に帰そうと考えていたようだ。もし犯行が起こっていれば、IRGCの事務所周辺は大惨事となっていたろう。
今回の暗殺作戦に参加したのは、ユダヤ・アラブの人物たちだ、と報じられているが、このユダヤ・アラブとは具体的に、どういう人種なのか分からない。イスラエル国籍を持つアラブ人なのか、アラブ・オリジンのユダヤ人なのかは、今の段階では判別出来無い。
いずれにしろ、暗殺に加わった3人が、実行前に逮捕されたわけだが、彼らは逮捕後に、大きな成果を挙げたかった、と語っていたということだ。もちろん、このスレイマーニ将軍の暗殺が成功し、無事帰還できていたら、世界的な大ニュースに、なっていたものと思われる。
犯行はイランの南西部、ケルマンシャーで起こる予定だったが、コドス部隊(スレイマーニ将軍直属の軍組織)によって発見され、暗殺は未然に防がれた。この作戦はシーア派の、アシューラの祭りにあわせて起こし、あたかもシーア派内部の対立が、生んだもののように、見せかけるつもりだった、ということだ。
従って、スレイマーニ尾将軍の挨拶作戦は、アシューラの祭りの、9月の8~9日に実行される予定だった、ということだ。しかし、暗殺者たちは事前に察知され、IRGC側の監視下に、置かれていた模様だ。
この暗殺者たちは、イスラエルやイランの近隣国(つまりアラブ湾岸諸国、なかでもサウジアラビア) から、送られたということだ。彼らは暗殺の前に、相当高い訓練費用を払って鍛えられた、メンバーだったということだ。
このスレイマーニ将軍暗殺計画は、数年かけて準備され、宗教がらみの内部対立抗争、部族による地方グループの犯行のように、見せかけようと仕組まれていた。だが、イスラエルが主犯の、このスレイマーニ将軍暗殺計画は、失敗に終わった。
しかし、長期間をかけ、訓練にも時間と費用をかけて計画された、この暗殺作戦はある見方をすれば、いかにスレイマーニ将軍が、重要な人物であったか、ということであろう。また、サウジアラビアやイスラエルが、どれだけイランを敵視し、危険視しているかということも、表すものであろう。
そう考えると、大二弾第三弾の計画が、立てられであろうことから、アラブ湾岸諸国イスラエルとイランとの緊張関係は当分続くということであろう。