トルコのエルドアン大統領は、大分アメリカとの交渉を、長く我慢してきた。その我慢とは、シリアの北部に安全地帯を設置する、作戦を実行することだった。その安全地帯が出来上がれば、トルコへのシリアからの侵攻は、阻止出来るという計算だ。
この安全地帯設置の目的は二つあり、ひとつは、シリアのクルド・ミリシアのYPGによる、トルコヘの軍事侵攻とテロ活動を、押さえることが出来る、ということだ。このYPGはトルコの考えでは、トルコ国内で活動するクルド・テロリストPKKと、連携しているというのだ。
このYPGはSDFと並んで、アメリカ軍と協力しており、半ばアメリカ軍の庇護下にある組織なのだ。そのため、アメリカは今まで、トルコ側の要求する、安全地帯の設置構想に、賛成してこなかったのだ。
アメリカはこのYPGやSDFを使って、対IS(ISIL)掃討作戦を、シリア国内で進めてきたのだ。つまり、YPGはアメリカ軍にとって、友軍ということになる。その友軍であるYPGが、トルコ軍と戦うことになれば、相当のダメージを受けることになろう。
その辺のアメリカ側の事情は、トルコには充分に分かっている、そのために、トルコは長い時間をかけて、安全地帯設立交渉をアメリカ側と、してきていたのだ。だが、ここに来て、遂に我慢が限界に達した、とエルドアン大統領は言い出した。
エルドアン大統領は『トルコが臆病だ、と思っているかもしれないが、それは間違いだ、トルコ軍は2016年と2018年に、シリア国境を越え、IS(ISIL)と戦闘を行い、かつ、クルドのYPGとも交戦している。』と語った。
さて、エルドアン大統領はシリアへの軍事侵攻を、安全地帯設置の一歩と考えており、その結果、安全地帯が設立され、しかも、YPGを国境地域から掃討できる、一石二鳥の作戦だと自画自賛している。
だが、安全地帯から繋がる、シリアのユーフラテス川東岸地域は、IS(ISIL)の潜伏地域でもあり、作戦は決して容易ではあるまい。それでもエルドアン大統領が、この作戦を実行したいのは、ユーフラテス川東岸地域には、石油が埋蔵されていることにも、あるのかもしれない。エルドアン大統領の欲が勝つか、IS(ISIL)が勝つかということではないのか。