エジプトで久しぶりに、反政府デモが起こった。デモ参加者の数は、あまり多くないようだが、人口の多い国であるから、政府のコメントによれば、デモ参加者の数はあまり多くない、と言う判断であろう。他の国なら相当な数、と言う判断が出ていたものと思われる。
しかし、報道写真を見る限り、デモの規模はそう小さくないようだし、首都のカイロだけではなく、ギザ、アレキサンドリア、スエズ、 ガルビーヤ、ダクハリーヤ、ベニセーフ、シャルキーヤ、ダミエッタと広範に渡って、行われたようだ。
地方でも、デモが起こったと言うことは、しかるべき組織が存在し(多分ムスリム同胞団がデモを、裏から指揮しているのであろう)、同時期に多くの場所で、デモが起こるように、働きかけたものであろうことが、想像できる。それだけ今回のデモは、実は大規模なものだった、ということであろう。
こうした広範に渡るデモでは、政府は首都カイロでのデモを、どう押さえ込むかが、重要であろう。首都でのデモが大荒れに荒れ、流血や死者が出たのでは、国際的にも知られるところとなり、対応は難しくなろう。既に国際人権団体は、人権を守れと呼びかけている。
エジプト政府はカイロの中心地、タハリール広場に集まった、デモ隊に対して、催涙弾を発射している。この催涙弾は結構毒性が強く、相当きついものだ。トルコのイスタンブールで、この催涙弾を体験したのだが、嘔吐、涙、のどの苦しみと、相当多くの反応が出たことを、記憶している。
パレスチナでも催涙弾は、イスラエル軍によって使用され、彼らは香水、オーデコロンが有効だと言っていた。イスタンブールではオレンジが、催涙弾の害を和らげる、と友人が言っていたことを、思い出す。
さて、このデモ隊はシーシ大統領の、辞任を要求している。『シーシ大統領は去れ!』と叫んでいるのだ。その理由は多くの受刑者が、長期の受刑判決を受けていることや、刑務所内での待遇が、悪すぎることなどに加え、物価高などの生活苦に、よるものであろう。
エジプト政府が財政難から、IMFの資金を受け入れたが、それは政府の食料、生活必需品に対する、補助金を減らすことを、強いられるのだ。従って、庶民にとってはIMFは敵なのだ。それでもIMFは、エジプト政府がIMFの指導に従って、経済改善に努力しており、その成果が上がっている、と賞賛している。
エジプト政府はデモの規模が小さいとし、報道も控えめにしており、地方では首都カイロでデモがあったことを、知らずにいるのだろう。しかし、アラブ社会はエジプトに限らず、人の口から口に伝わる、情報の流れが極めて早く、それは伝わる段階で、憎しみを強め、政府の弾圧振りを、誇張していくのだ。
その結果、政府はデモを抑えきれなくなる、ということだが、今回はどうなのであろうか。いずれにしろ、今回のデモはエジプトでは、大分しばらく振りのことであり、やはり充分に警戒するに越したことは、無いのであろう。