イランとアメリカとの間で起こっている軍事緊張は、アメリカが各国に呼びかけたにもかかわらず、あまり乗ってくる国がなかった。アメリカとしては多くの賛同国を得て、イランを海上封鎖し、圧力をかけるつもりでいたようだ。
アメリカの言うことなら、どんな無理でも受け入れてきた日本ですら、この作戦には参加しなかった。それでも、何もしないわけにはいかないので、日本はペルシャ湾のホルムズ海峡ではなく、紅海側のバーブルマンデブ近海に、海上自衛隊の艦船を送ることを決めた。
日本とすれば、これでイランへの義理も立ち、今後の日本・イラン関係に、心配は生まれまい。また、日本はイランのハメネイ師と会える国であり、アメリカとイランの仲介役が出来ると言うことが出来、アメリカのメンツも立てることが出来よう。
そもそも、アメリカはイランとは一戦を、交えたくなかったのだ。だんだん時間が経つにつれ、アメリカのイラン締め付けは、緩んできているような気がする。そうなると、アメリカにとって不都合なのは、サウジアラビアに武器の押し売りが、出来なくなるということだ。
そうしたなかで起こったのが、サウジアラビア空軍によるイエメン収容所(兼刑務所)に対する、空爆だった。この空爆で収容されていた人たち、170人程のうち60人が死亡し、100人近くが負傷を負った、と第一報では伝えられた。しかし、その後負傷者の多数が死亡することとなり、いまでは死者の数が100人を超えている。
後で分かったのだが、この収容所はイエメンのホウシ・グループの所有であり、収容されていたのは、イエメン軍の将兵たちであったろう。こうなると、サウジウアラビアの空爆に対して報復することになるのは、ホウシ・グループであり、イエメン軍であろう。
なかでも、ホウシ・グループによる報復は、相当激しいものになるのではないか、と思われる。ホウシ・グループにはイランが提供したドローンが多数あるし、距離の長いミサイルもそろっている。
以前、ホウシ・グループがサウジアラビアに攻撃を加えたのは、サウジアラビア横断パイプ・ラインであり、その中間のポンプ・ステーションであり、リヤド近郊だった。彼らには
1500~1600キロ飛行する兵器があり、その攻撃範囲にはペルシャ湾岸の、サウジアラビアの石油施設も含まれることは、述べるまでもあるまい。
今回のホウシ・グループの収容所に対するサウジアラビアの攻撃は、被害が甚大であったこともあり、非人道的な行為として、世界にアピールしやすいだろう。同時にイランはどんどんホウシ・グループに武器を供与し、サウジアラビアを攻撃させるだろう。
その結果、アメリカはイランとの間で軍事緊張をあおらなくても、サウジアラビアに武器を売ることが出来よう。