イギリスはかつて、アメリカをコントロールする国、と評価されていた。湾岸戦争が開始されたのは、当時のイギリスのサッチャー首相が、アメリカのジョージ・ブッシュ大統領と政府をけしかけ、尻を叩いて始められたのだ、と言われていた。
それほど90年代までは、イギリスとアメリカとの関係が、強かったということであろう。しかし、最近では何かに付けて、イギリスとアメリカとの関係が、疎遠なものになってきているように思える。
それは、イギリスがEUから離脱することに、起因しているのかもしれない。これまではイギリスがEU内部にあって、アメリカの意向を反映するように、動いていたのであろう。言わば、イギリスはアメリカがヨーロッパ全体をコントロールするための、回し者のような役割を、演じていたのではないか。
しかし、イギリスがEUを離脱すれば、イギリスのEUへの影響力は無くなり、アメリカのための工作も、スパイ活動も無くなってしまおう。こうなっては、アメリカにとってイギリスは何の価値も、無くなるのではないか。
そのため、アメリカのイギリスに対する対応には、これまでのような親密さは無くなり、ビジネスライクに変化しているのかもしれない。それをイギリス側も感じ、これまでのようなアメリカを考えての、外交は止める方向に、向かっているのかもしれない。
イギリスとアメリカとの関係が、醒めたものになり始めたのは、数年前にイギリスが中国の設立した、AIIBに参加することを、決めた頃からであろうか。このAIIBに対して、アメリカは真っ向から、反対していたのだ。
そして最近では、イランのタンカーがジブラルタルで拿捕されたが、その後のイギリスの動きは、アメリカの意向に反するものに、なっているように思える。ジブラルタル政府はイギリスの、言わば管理下にあるわけであり、ジブラルタル政府の決定は、イギリス政府の決定ということなのだろうが、そのジブラルタル政府はイランのタンカーを釈放することを決めた。
アメリカは法的な問題をちらつかせ、何とかイランのタンカーを再拿捕したい、と望んでいるようだが、世界の何処の国もそれには賛成すまい。EUはもちろんのこと、イランのタンカー拿捕賛成していない。
結局のところ、ジブラルタル政府の決定に基づき、イランのタンカーは釈放され、帰国することになったようだ。もう、アメリカの意向には沿わない、という姿勢であり、そのジブラルタル政府の決定の裏には、イギリスの強い意向が、働いているからであろう。
イギリスはアメリカの唱える、イラン包囲軍にも直接は、参加しなかった。日本と同じような玉虫色の解決、という間接参加に止めている。これではアメリカの威信は、大分傷つくのではないか。