どうも気になる現象が、アラブ世界では、始まっているようだ。これまでは、石油施設に対する攻撃は、無言の了解の下に、各国が実施しないで来た時期が長い。60年代から80年代、あるいは90年代にも、石油施設に対する直接的な攻撃は、起こる件数が、極めて少なかったのではないだろうか。
ところがいまの時期になり、石油施設への攻撃が明確に、増加しているような気がする。その最たるものは、イエメンによるサウジアラビアの、石油施設への攻撃だ。ドローンを使い、石油貯蔵所やパイプ・ラインに対する攻撃が、起こるようになっている。
以前、サウジアラビアの石油パイプ・ラインへの攻撃が、イエメンによって行われたときは、このパイプ・ラインが紅海側から、ペルシャ湾側に繋がる、大パイプ・ラインであったために、世界は震撼した。
最近は、イエメンのドローンを使った、サウジアラビアの石油施設に対する攻撃が、頻繁に起こっており、サウジアラビアのシャイバ油田地帯に対する、ドローン10機を使った攻撃が行われた。
シャイバ油田地帯は、サウジアラビア最大のものであり、アラブ首長国連邦に隣接する地域にある。この攻撃では石油貯蔵庫や製油所も、攻撃されているのだ。しかも、イエメン側は今後、攻撃範囲を拡大する、と言っているのだ。
こうしたイエメンによる、サウジアラビアの石油施設に対する、攻撃が行われているのは、サウジアラビアがイエメン内戦に、首を突っ込み攻撃をし始め、それが甚大な被害を、イエメン国民にもたらすようになったからだ。
イエメンによるサウジアラビアの石油施設への、攻撃ばかりではなく、バハレーンの石油施設への、攻撃も起こっている。これは、シャイバ製油所であり、述べるまでも無く、バハレーン最大のものであろう。
バハレーンはサウジアラビアと同じように、シーア派国民に対する、厳しい取締りを続けてきており、先日もシーア派国民に対する、死刑判決が出されたし、多くのバハレーン国民が、国籍を剥奪されてもいる。
そして、そのバハレーンのシーア派国民を、裏で支援しているのはイランだ。イエメンの場合もホウシ・グループを始めとして、イランによる武器や資金のた供与が、噂されている。つまり、イエメンによるサウジアラビアの、石油施設に対するテロも、バハレーンの石油施設に対するテロも、背後でイランが糸を引いている可能性が、あるのではないか。
バハレーンはアラブ湾岸諸国のなかで、最大のアメリカ海軍基地のあるところだ。そこの石油施設に対するテロが続き、大事故にでもなれば、アメリカ海軍は活動出来なくなる、可能性がある。こう考えてみると、最近頻発している、アラブの石油施設に対する攻撃は、アメリカによるイラン包囲作戦に対抗する、イラン側の動きかもしれない。