『アラブ湾岸諸国がイラン寄りに』

2019年8月 1日

 

  アラブ湾岸諸国と言えば、サウジアラビアを筆頭に、反イラン色の強かった国々だった。しかし、ここに来て状況に変化が、生まれ始めている。いまでは、サウジアラビアを支持する国よりも、イランと関係回復を急ぐ国が、増えてきているようだ。

 その皮切りはオマーン。オマーンはダルフール内戦以来、イランが支援してきた国であり、イランとはいかなる状況下でも、親しい関係を維持してきていた。だが、オマーンの外務大臣がイランを訪問し、両国関係の促進を討議したことは、注目に値しよう。

 両国はホルムズ海峡の安全確保でも、協力すると言い出しているのだ。これはイランを追い落とそうと考えている、アメリカの立ち場とは真っ向から、対立するものではないか。

 オマーンに続いて、アラブ首長国連邦もイラン接近を、始めている。アラブ首長国連邦の海軍幹部が、イランを訪問し、ペルシャ湾の安全協力を、話し合っているし、アラブ首長国連邦の2銀行が、イランとの銀行取引を拡大する方針だ。イラン側もアラブ首長国連邦の銀行との、取引を拡大し、アメリカの経済制裁を打ち破ろう、と考えている。

 オマーンほどではないが、アラブ首長国連邦、なかでも、ドバイとイランとの関係は長い歴史を通じて深く、小型船やスピードボートで、両国の通商は続けられてきていた。イランのビジネスマンの多くが、アラブ首長国連邦に住宅を持ち、銀行口座を持ち、イラン国内では出来ない取引を、この銀行経由で行っているのだ。

 私自身もイランで買い物をしていて、ドルが乏しくなった時、その旨を伝えると、店主はドバイに口座がありますから、カードで結構ですよ、とこともなげに言われたのだ。

 オマーンやアラブ首長国連邦だけではない。カタールもイランと関係がいい国だが、クウエイトはだいぶ前から絨毯をはじめ、取引をしている。イラン産のサフランやピスタチオなども、しかりであり、クウエイトは騒がないが、結構イランと良好な関係を、維持している。

 こうなると残されたのは、サウジアラビアとバハレーン、ということになるが、バハレーンはコーズウエー橋で、サウジアラビアとつながっており、サウジアラビアの一県のような存在だ。この国は枯渇した石油を、サウジアラビアからもらい、産油国の体裁を維持しているに、過ぎない。

 さて、何故アメリカがイランを、追い込もうとしているこの時期に、オマーンやアラブ首長国連邦は、あからさまにイランとの関係を、促進しているのであろうか。実はアメリカの唱えるイラン包囲網の、合同軍の結成が、うまく進んでいないからではないか。

 ヨーロッパ諸国はドイツやフランスを始め、アメリカの合同軍には参加しない、と明言している。もちろん、イタリアもしかりだ。これでは完全にアメリカは、メンツを失ってしまうことになろう。

 そこでオマーンやアラブ首長国連邦に、イランに接近させ、イラン側に妥協の道を開かせよう、としているのではないか。アメリカはイランが少しでも、妥協してくれれば、アメリカの強圧外交は成功した、と言いたいのであろう。

 さてその場合、サウジアラビアの立場は、どうなるのであろうか。完全にこの新しい流れから、外れてしまっているではないか。アメリカはカシオギ事件以来、サウジアラビアを野蛮な国家、とみなす人が増えており、今回の動きはサウジアラビア、お灸をすえるつもりかもしれない。