『砂漠は大海だという言葉の意味イラク戦線』

2019年7月22日

 以前アラブ人から『砂漠は海だよ。そこを旅する者は航海士であり、ラクダは船だよ。』という話を聞いたことがある。しかし、その実感が全く沸いていなかったのだろう。70を過ぎ何十回、何百回と、アラブを訪問した挙句になって、それが分りかけて来たような気がする。

 イラク軍の将校が、ワシントン・ポストの記者に語った言葉が、紹介されている。『これまで誰もここを、コントロールなんか出来てこなかった。ここは砂漠であり、洞穴であり、誰もこれまここ砂漠を、コントロールなんか出来なかったのさ。』確かにそうであろう。

 以前アラブ人から聞いた言葉が、そのことでよみがえってきた。砂漠は広大であり、地形は複雑であり。幾らでも隠れることが出来る、洞窟のようなものであり、海のようなものなのだろう。だからイラク政府は何度と無く、IS(ISIL)のテロリスト掃討に、成功したと言いながら、次から次とIS(ISIL)による、テロ攻撃にさらされてきたのであろう。

 今月に入り、イラク政府は徹底的なIS(ISIL)掃討作戦に乗り出したようだ。この作戦にはハシド・シャアビーというミリシアも、参戦することになった。このハシド・シャアビーは地域住民と密接な関係を、持っていることと、砂漠戦に強いという、軍では取れない敏速な行動も、取れるようだ。

 他方、IS(ISIL)側はシリアからユーフラテス川を越えて、侵攻してきてもいるのだ。そして。地域住民たちはIS(ISIL)に代わる、新たなテロ組織の侵入を、歓迎しないという心理がある。もしそうなれば、地域住民とテロ組織との交渉は、初めからやり直しになるからだ。

 そうしたこともあり、今回の作戦に先立ち、幾つかの住民グループは、現地から追い出されている。イラク軍にしてみれば、地域住民(部族)にIS(ISIL)の支援をされては、たまらないからであろう。

 今回始まったのは、第2フェーズ作戦と呼ばれる作戦であり、首都バグダッドの周辺地域から、IS(ISIL)を掃討する作戦だ。アンバル県、サラーハデーン県、デヤラ県などで、展開されるとになっている。この作戦には、イラク空軍の戦闘機も参加するため、作戦は大規模なものとなりそうだ。

アブドルマハデイ首相は今回の作戦を、『英雄的なものだ。』と称賛している。