『タンカー拿捕狙いはイランかシリアか』

2019年7月 7日

 

 ある友人から電話があり、イランのタンカーがジブラルタル沖で拿捕されたのは、イランではなくシリアが狙いであろう、貴兄の文書では読者に誤解を招く、という指摘を受けた。しかし、どう考えてもいまシリアとイランと、どちらが重要かと言えば、イランに決まっている。

 ジブラルタル自治政府による拿捕、ということになっているが、その後ろにはイギリスが控えており、またその後ろにはアメリカが控えていて、起こったのが今回のイラン・タンカー拿捕だったと思う。ジブラルタル自治政府にはそれだけの力は無いからだ。

 アメリカに言わせれば、シリアのIS(ISIL)問題はほぼ終りであり、アメリカがシリアをいま強硬に、攻撃しなければならない理由は無い。あるとすれば、イスラエルの危険を避けるためであろうが、イスラエルも今のシリアが、危険な国家とは思っていまい。

 イスラエルにとって、シリアが危険ではなくなったのは、ロシアのシリアに対する影響力が強く、シリアは独自の意志で、イスラエルを攻撃することは、ありえなくなっているからだ。以前、シリアはS300ミサイルを持ちながら、イスラエルの攻撃に反撃しなかった。それはイスラエルとロシアの話し合いが、進んでいるからに他ならない。

 そうなると残りのイランが、今回のタンカー拿捕事件のターゲットだった、ということになろう。イランとアメリカとの間では、イランの核開発問題があり、イランは核の濃縮を続け、しかも濃縮の度合いを高めており、将来の核兵器に繋がる、危険性があると考えていよう。

 加えて、アメリカから見れば、イランはペルシャ湾内外で、アメリカと外国の船舶を攻撃する準備が整っている、先日はタンカーなどが攻撃され(?)、アメリカの高価なドローンも撃墜されている。そして、イランはアメリカの盟友、サウジアラビアやアラブ首長国連邦を、恫喝してもいる

 その上、イランはシリアに軍事基地を設立し、装備を固めており、機会あればイスラエルを攻撃しようと考えている、とアメリカやイスラエルは考えていよう。イランのミサイル基地は容易に、イスラエル領内に届く距離にあるのだ。

 こうして考えてみると、アメリカはシリアではなく、イランに圧力を掛ける口実を、探しているということではないのか。戦争が出来なくなったアメリカは、経済制裁、金融制裁など、制裁でホット・ウオーの代わりにしようと思っている。

 今回のタンカー拿捕事件は、イランが強硬な立場を取る事により、アメリカに新たな制裁を行う口実を、与える目的ではなかったのか、と思うのだが。