『選挙前に負けていた与党AKP候補』

2019年7月 5日

623日に行われた、イスタンブール市の市長選挙結果は、野党CHPのイマモール氏の勝利で終わった。9ポイントも差をつけて、与党AKPの候補者ユルドルム氏に勝ったのだから、記録的な勝利であったと言えよう。しかも、その数値はエルドアン大統領のイスタンブール市長時代に、到達できなかった,高いものであった。

 さて、では誰がイマモール候補に、投票したのかを調べてみよう。AKPと連帯関係にある、右翼のMHPの党員は驚いたことに、3分の1が野党側候補への、投票に転向していたのだ。イマモール氏を支持すると答えた者は、28パーセントに達していたことが、当時の世論調査の結果で 分っていた。

 しかも、4月の選挙当時のMHP党員の、イマモール氏支持は、11パーセントだったのだから、いかにイマモール氏に支持が、動いたのか分かろう。トルコ社会は保守的であり、党員は党の方針に、盲目的に従うのが常なのだが、今回はそれが崩れた、ということであろう。

 加えて、与党AKPの党員も35パーセントが、イマモール氏支持に回っていたのだ。これ以外にも、一般のクルド国民やクルド政党のHDPの党員も、イマモール候補支持に回っていた。クルドの62パーセントがイマモール支持に回り、アレフ教徒(イスラム教マイノリテイ)の87パーセントも、イマモール氏支持に回っていたのだ。

 大卒者の64パーセントは、イマモール候補を支持していた。これも3月の段階では48パーセントだったのだから、大幅な伸長ということになる。多分これは、テレビによる与野党候補のデベートが、効を奏したのかもしれない。

 主婦層も3月にはイマモール候補支持が、22パーセントだったのだが、6月の選挙時には、35パーセントに増えている。

 これではイマモール氏が大差をつけて、与党AKPの候補ユルドルム氏に勝って、当たり前であったろう。トルコでは与党の党員や、与党支持のMHP党員が、多数イマモール氏に、投票をユルドルム候補から、変えたということだ。

 これは今後のトルコの政治が、大きな変化をする兆候ではないか。イマモール氏のイスタンブール市長選挙での高支持率を見ると、彼を次の大統領候補にしろ、という声が出てきても、不思議ではあるまい。