『マグリブ圏が危険を増している』

2019年6月29日

 マグリブというのは北アフリカの、3国を指す地名だが、それはモロッコ、アルジェリア、チュニジアを指している。ヨーロッパの中のフランスが、植民地支配していた地域のことだ。そのためアラビア語もさることながら、都市部ではフランス語が、通常の言語として用いられてもいる。言ってみれば文化的に、二重構造の国々なのだ。

 しかし、こうした複雑な事情の国々というものは、えてして歴史を逆戻りする、傾向があるようだ。つまり、イスラムへの回帰ということだ。いままでフランス語を話し、フランス人と同じような言動をいていた人達が、突然ヘジャーブを被り、男たちは数珠を片手にし、髭を蓄えるようになる。

 同時に、外国なかでもヨーロッパからの、文化や政治に対し、強い反発を示すようにもなる。そうした時期には当然のことながら、イスラム回帰が進み、過激なイスラム思想が、はびこっていくことになる。

 その原動力は社会的不平等や、失業でもあろう。マグリブ圏の国々は押しなべて失業、社会的不平等がはびこっているのだ。こうした社会環境は、IS(ISIL)の台頭を許すことになっていった。

 モロッコは女性のIS(ISIL)のためのリクルーターが、多数現れているし、もちろん、その活躍のおかげで、IS(ISIL)は戦闘員を、集めることが出来ている。チュニジアは最も多くの、IS(ISIL)戦闘員を排出した国だ、と言われている。それはこの国の失業問題が深刻だからであろう。

 アルジェリアは150年にも及ぶ、反フランス植民地闘争を行った国であり、アルジェリア人の気性は激しい。この国はガスや石油を産出するとはいえ、決して経済的にいい状態にはない。それは社会的汚職が、はびこっているからでもあろう。

 それら3国がいま、大きな変革のうねりの火中にある。モロッコは長い間続いてきた、王制に対する反発が、目立ってきているし、秘密警察が王制を維持するために、過激な取締りを行っていることもあり、失業とあいまって、次第に社会は混乱してきている。

 チュニジアは93歳を越えるシブシ大統領の、健康状態が悪化したことで、社会は不安定化し、シブシ大統領の子息や軍幹部が、次の権力を狙って動いている。こうしたなかでは、権力内部間の暗殺が、始まる危険性があろう。

 アルジェリアも然りだ。この国でもブーテフリカ大統領の健康が悪化しているし、権力の交替が起こって当然、という見方が一般的だ。既にアルジェリアでは長期間続いた、大衆のデモ運動の結果、ブーテフリカ大統領やその取り巻きたちの多くは、拘束されてもいる。ブーテフリカ大統領に近かった、財界の大物も逮捕されるに至っている。

 マグリブ圏諸国は同時期に一斉に、反政府運動が燃え始めているということであり、それは一定の結果が出るまで続くだろう。それには長い時間は、かかるまい。