『中東短信』

2019年6月25日

:アメリカはハメネイ師を狙う

 アメリカのトランプ大統領は、イラン宗教と政治の最高指導者である、ハメネイ師を狙うことを、決めたようだ。狙うと言っても、銃弾が彼に向かって飛ぶのではなく、資金的に締め上げるということのようだ。

 アメリカのトランプ大統領は、ハメネイ師の預金口座を凍結し、金を動かせなくすることを決めた。こうなると、ハメネイ師はバザール商人などへの影響力が、大幅に落ちることになり、場合によっては権力の座から、転がり落ちるかもしれない。

 これまではイスラム慈善基金が、ハメネイ師の手に握られており、ハメネイ師と側近たちはその資金を、バザールの商人たちに融通してやって稼ぎ、かつ、支持を固めていたのだから、このハメネイ金縛り策は、効果があるかもしれない。

 

:アメリカ・ガルフでの安全は自分で守れ

 トランプ大統領はアラブ湾岸諸国から、石油を輸入している国は、自国のタンカーを自国で守れ、と言い出している。そのなかには中国や日本も含まれているが、中国はアラブ湾岸諸国から、

91パーセントの石油を輸入しているし、日本も62パーセント輸入している。

 トランプ大統領に言わせると、アメリカはアラブ湾周辺での、各国の船舶の安全を、無料で守っているが、これはおかしいではないか、ということだ。確かにその通りであろう。各国はそれぞれに輸送船を守って、しかるべきだというのが、トランプ大統領の理屈であろう。

 しかし、そうなればペルシャ湾内や、ホルムズ海峡周辺海域は、各国の艦船でいっぱいになってしまう、ということだ。そのために味方同士が衝突したり、事故を起こすこともあろう。あるいは友軍同士が、無線で連絡を取り合うために、周辺諸国には電波妨害が起こり、大混乱が起こることに、なる可能性もあろう。

 トランプ大統領に言わせると『イランは友人であり、何時でも仲良くなれる。イランは潜在的に、大きな経済的潜在力を持ってもいる。それに協力する意思はアメリカにはある。ただし、条件はイランが核兵器を開発しないことと、テロリストに支援を送らないことだ。』というのだ。アメリカは世界最大の石油産出国であり、イランの石油に頼る必要は全くない、問題はイランの核兵器開発とテロ支援を、止めることだというのだ。

 話しはそう簡単ではあるまい。この後、トランプ大統領の呼びかけに、各国が応えることになれば、世界の軍艦はイランを包囲した形になり、それだけでもイランの体制は、ぐらつくことになろう。

 日本にとっては、もしそれで艦船をこの地域まで送り出せば、以後はアメリカ海軍の指揮系統下に、組み込まれてしまうということであろう。

 

:トルコのアリ・ババジャン元蔵相新党結成へ

 これまでも何度か話題に上っていたのだが、今回のイスタンブール市長選挙後、アリ・ババジャン氏は新党を結成する方針を、口にしている。つまり、今回のイスタンブール市長選挙で、エルドアン体制が大分弱体化してきたことが、明らかになったためであろう。

 アリ・ババジャン氏は元与党AKPの閣僚であり、温厚な性格であり、人柄もよく、インテリでもあるため、トルコ国民からの支持は厚い。与党AKP の弱体化の中で実際にアリ・ババジャン氏が新党を結成すれば、ごそっとAKP支持者が彼の新党に、支持を移すかもしれない。

 

:サウジアラビアで反ワハビー犯処刑へ

 サウジアラビアではイスラム教スンニー派のなかの、ワハビー派が絶対的な影響力を、持っている。そもそもこのワハビー派は、サウジアラビア王国が誕生する以前からあったもので、イブン・サウード王がサウジアラビアを建国するに際して,手を組んだ相手がこのワハビー派だった。

 このワハビー派の教義は極めて厳しいために、これまで反発する者が出る度に、処刑されてきていた。今回も若者がワハビー派に、反発したことが原因で、死刑に処せられそうだ。それはカシオギ事件の後だけに、世界の注目するところとなろう。