『イスタンブール市長選挙とその後』

2019年6月22日

  623日は、トルコ最大の都市イスタンブールで、市長選挙が行われる。大方の予想では、野党CHPの候補者イマモール氏が、当選するだろうと言われている。それは選挙予想会社などの、予想でもそうなっており、イマモール氏が68パーセント、与党AKPの候補者ユルドルム氏をリードしている、と出ている。

 しかし、エルドアン大統領は何としてもイマモ-ル氏の当選を認めたくないようだ。それは、イスタンブール市がエルドアン大統領の、政治家としてのスタートの地であり、長い間市長を勤めてきた、場所でもあるからだ。

 この市長選挙で、与党AKPの候補が敗れることになれば、それはエルドアン大統領にとって、屈辱的な結果ということになろう。そのため、エルドアン大統領はある都市の、市長に対する侮辱ということで、イマモール氏は政府に侘びをし、同氏に侘びをしなければ、裁判にでも訴えるという勢いだ。

 こうした背景から、予想される今後の動きは、623日の投票で、イマモール氏が当選し、それが発表される段階で、エルドアン大統領がこれを覆すために、イマモール氏の当選を否定し、彼を逮捕投獄するということが、起こるのではないか、と懸念される。

 ただ、今回の選挙はそうした予想もあり、尋常ではすまないだろうという懸念から、EUが大選挙監視団を送ることを決めているし、世界の多数のジャーナリストたちも、注目しイスタンブールに集まっていよう。

 そうしたなかで、エルドアン大統領が強権を発動したら、結果は彼に不都合なものとなろう。そうしないで、イママモール氏の当選を、駄目にするには、大衆の暴動を起こすことではないか。つまり、イマモール支持者たちが、当選祝いで集まっているところに、与党のAKP側の支持者たちが押しかけ、暴力沙汰を起こすということだ。

 暴力事件が拡大すれば、政府は暴動の鎮圧を理由に、警察や軍隊を出動させることが出来、そのドサクサのなかで、イマモール氏に暴動の責任を、擦り付けることも出来よう。そうなれば、イマモール氏は当選の祝杯を、上げることはできず、刑務所に直行することに、なるのではないのか。

 世界から集まったジャーナリストや、EUから派遣された、選挙監視委員たちの非難も、暴動の扇動を理由に、エルドアン大統領はイマモール氏の当選を、無効とし、その後の政治家としての道も、絶とうということに、なるのではないか。

 そうした懸念が、単なる懸念で終わることを、いまの段階では祈るしかあるまい。それほどイスタンブール市長選挙は、熱を帯びているし、危険なものでもあるということだ。そしてエルドアン大統領の、今後の権力維持にも、今回の選挙は大きく影響する、ということでもあるのだ。