何やら 何処かで聞いたような文言だが、これはアメリカがイランの石油について語った一言と、全く同じではないか。アメリカはイランが核開発を進めているので、これを阻止するために、イランの石油輸出をゼロにする、と息巻いた。このとばっちりを受けて、多くの国々がイランから石油を、輸入出来なくなり、苦しい立場に置かれている。
現実に、このアメリカの『イラン石油ゼロ工作』は、効果を生んでいるのであろうか。アメリカが望むような、石油の高価格化はいまだに、実現していない。アメリカとすれば、アメリカの石油が枯渇する前に、自国の石油をなるべく高く売りたい、とういうことであろう。
そして世界一の石油生産量を誇るアメリカが、最近ではアラブ湾岸諸国から、石油を安価に買い、転売しているのだ。何処か悪徳商人を思わせる、所業ではないか。
他方、イランのケイハン新聞によれば、サウジアラビアはイエメンの敵組織、ホウシ・グループの攻撃を受けて、石油を売れなくなる時が来る、ということだ。それもゼロになるのだから、サウジアラビアにとっては、きついご託宣であろう。
もちろん、この場合サウジアラビアの石油が、輸出できなくなる原因は、イランがサウジアラビアの石油施設を攻撃してではない。攻撃はイエメンのホウシ・グループによるものであり、ホウシ・グループはドローンを使って、サウジアラビアの石油が、輸出できなくなるように、出来るというのだ。
実際に数日前には、ホウシ・グループによるサウジアラビアのメイン・パイプ・ラインが攻撃され、石油の紅海側からペルシャ湾側への、輸送はストップしている。それ以外にも、サウジアラビアの石油施設、ポンプ・ステーションが攻撃されている。
もし、ホウシ・グループ側が本格的に、攻撃を始めれば、サウジアラビアの石油は完全に、止まってしまうだろう。以前の攻撃では、パイプ・ラインの損傷が、軽微であったために、いち早く修繕され、石油輸送は再開されている。
このホウシ・グループは、イラン政府が支援している、と言われており、彼らが使用するドローンは、イランによって提供されているのであろう、とみられている。加えてミサイルも同様に、イランからの供与のようだ。
このミサイルは何度と無く、サウジアラビアの首都リヤドに向けて、発射されている。しかし、リヤドの近郊に落ちたと説明され、それ以上の被害の状況は、完全に封じられ、外部には漏れて来ていない。
イランのカイハン紙によれば、イエメンとサウジアラビアの都市は、せいぜい230キロから390キロ程度の距離であり、ホウシ・グループが放ったミサイルは、容易にサウジアラビアの都市部に届く、ということだ。
アメリカにはそれを阻止する能力はない、とイランは見ているようだ。あるいはアメリカには、サウジアラビアやアラブ首長国連邦を、守ってやる意思が無いのではないか、とまで言っている。これに対して、イランは地域のいずれの国も、公にでも秘密裏にでも、守ってやる意思がある、と述べている。
アメリカも完全になめられたものだ。トランプ大統領は何度と無く、イラン攻撃を口にしては、引っ込めている。イラン攻撃をめぐっては、アメリカ政府内部に亀裂が生じている、とも言われている。腰の引けたトランプ大統領とは異なり、ポンペオ氏やボルトン氏などは、極めて強硬な、『イラン撃つべし論』をはいている。
しかし、こうしたアメリカの強硬論を前に、イランの最高指導者ハメネイ師は、『戦争など起こりえない。』と鼻でせせら笑っている。戦争は起こらないに越したことは無いし、アメリカにはその力が既に無くなった、ということではないかと思いたい。