『イスタンブール再投票・エルドアンの独裁』

2019年5月 8日

 トルコの地方選挙は、ほとんどの大都市で与党AKPが敗北する、という結果が出た。首都のアンカラだけではなく、最大都市イスタンブールでも敗北したが、ここの与党側の候補者は、元首相のユルドルム氏、エルドアン大統領の地盤であるイスタンブールで、元首相が立候補して負けるのだから、与党としてもエルドアン大統領としても、立場は無かったろう。

 そこで、与党というかエルドアン大統領は、票の再計算をさせたが、やはり敗北していたことが明らかになり、次いで選挙管理委員会に対し、不正があったということ、再投票を命令した。

 一説によれば、与党は選挙管理委員に対し、言うことを聞かなければ投獄る、と脅していたということだ。そのかいあってか、再投票は623日に、行われることになったようだ。

 AKPと関係の深いMHP党はこの決定を歓迎し、エルドアン大統領も大満足のようだ。もちろん、野党側は皆不満であり、イスタンブ―ル市長に当選していた、イマモール氏は怒り心頭だ。

 この後、クルドのDHP党は野党候補を支持する、つまり、イマモール氏を支援する、と発表している。野党連合が結束されることになれば、イマモール氏の再選はより確実なものになろうが、それを与党が予測できないわけはなく、あらゆる手段でイマモール氏を、引きずり落とすことを、画策しよう。

 選挙違反、汚職、犯罪、票の誤魔化しなど、幾つでも方法はあろう。何せ大統領閣下の命令なのだから、そうしたことを工作する連中は、何も恐れる必要はまい。ただ、その結果、トルコ国民が明確に二つに、分裂することだ。そして、その後には国民同士の流血事件が、頻発するのではないのか。

 当然のこととして、今回のトルコ与党AKPの対応を、EU諸国は激し非難しており、『これはエルドアンによる独裁体制だ。』と叫んでいる。そのことはますます、トルコのEU入りを遠ざけ、かつまたトルコ・リラの、下落を招くことになろう。既にトルコ・リラは毎日のように下げ続けている。(58日現在1ドル=618リラ)

 こうなると、外国からのトルコ投資は後退し、外貨の貸し付けも減ることになり、トルコの経済が苦しくなることは確実だ。エルドアン大統領は選挙に勝利し、自分の立ち場を守るために、トルコを破壊してしまうことに、なるのではないか。

 そうした状況のなかで、アメリカが助け舟を出すとは思えないし、ロシアに出来ることは、武器を売ることだけでしかないのではないか。日本には何の役割もなかろう。盟友トルコが滅びていくのを、指をくわえて見ているだけなのか。