『ラマダンが始まったというのに中東は戦争の継続』

2019年5月 7日

 5月6日に今年のラマダンが始まった。世界中のムスリムは日中飲まず食わずの生活を、一か月に渡って始めるのだ。もちろん、不真面目なムスリムもおり、必ずしも断食が完全に守られる、というわけではない。

 断食を免除される幾つかの状態もある。戦争(ジハード)を行っている者、妊娠中の女性、病人、旅人などがその主なものだ。それ以外にもあるが、ここではこれに留めておこう。

 さて今中東のムスリム世界では、幾つもの戦闘が展開されており、それが断食休戦に入るとは、限らないようだ。例えばリビアのハフタル将軍などは、このラマダン月にこそ敵をせん滅するのだ、と息巻いている。

 従って、リビアではラマダン停戦は起こりようもない。もちろ、ヨーロッパなどは停戦を呼びかけてはいるが、アメリカは必ずしもそうではないようだ。ハフタル将軍を支援するのは、陰ではアメリカであり、半ば公然と支援しているのは隣国のエジプト、そして湾岸のサウジアラビアとアラブ首長国連邦だ。

 サウジアラビアやアラブ首長国連邦が、ハフタル将軍を支援するのは、セラジ首相側がムスリム同胞団と、一緒だからだ。つまり両国の敵になるわけだ。そして、セラジ首相側にはIS(ISIL)も戦闘員を送っているが、これはトルコによるものだ。

 もう一つの中東の戦争はシリアだ。大分IS(ISIL)の戦闘力が低下し、アメリカはIS(ISIL)は殲滅したと言うが、ISはイドリブにしがみついており、シリア軍によ掃討作戦が続いている。

 そしてつい先日、停戦が合意されたと言われている、パレスチナとイスラエルとの戦闘は、何時再発してもおかしくない。実はパレスチナのハマースは停戦と言っているが、イスラエルのネタニヤフ首相は、必ずしもそうではないのだ。

 今回のガザ戦争ではパレスチナ側に、20人以上の死者が出、イスラエル側にも4人の死者が、出ているのだ。これに加え、イスラエルにとっては相当数の、負傷者が出ているし、家屋の破壊もすごい。ガザから発射されたロケット弾は、400発とも700発ともいわれている。

 もちろん、このロケット弾はイランが主な提供者であろう、したがって、アメリカはイスラエルを支援する立場上、シリアのイラン軍(革命防衛隊)を攻撃しなければならず、地中海に空母エイブラハム・リンカーンを始め、攻撃戦闘艦を集めているのだ。

 このことは近い将来、アメリカとイランとの武力衝突が、起こりうるということでもある。トランプ大統領はいまの段階では、イランに武力攻撃を始めるとは思えないし、彼も始めないとは言っているが、ボルトンやポンペオはやる気まんまんなのだから、ブレーキが利かなくなる時が、来るかもしれない。