『アメリカがムスリム同胞団をテロ組織と認識』

2019年5月 1日

 トランプ大統領は何事にも卓見がある、とでも言いたいのだろうか。今度はムスリム同胞団をテロ組織だと認識した。それはエジプトのシーシ大統領が、49日に訪米した折に依頼し、それを受けたものだった。

 ムスリム同胞団はエジプトのイスマイリヤで始まった、ハサン・バンナーの唱えたイスラムの新しい道だった。以来、ムスリム同胞団はエジプト社会で、影響を拡大して行き、ナセルの革命の前には、最大の勢力となっていた。

 しかし、ムスリム同胞団はナセルの弾圧を受け、アラブ世界中に散っていくこととなったが、今日なおエジプトでも大きな影響力を、有している。シーシ大統領が倒した、モルシー政権は、ムスリム同胞団の政府だったし、トルコやカタールとは、特別な関係を有している。

 今回、トランプ大統領がムスリム同胞団を、テロと決め付けたことは、各方面からリアクションが起ころう。それだけムスリム同胞団は今日では、世界的な広がりを有しているのだ。メンバーには多くのインテリがおり、理論闘争を仕掛けられる、可能性もあろう。

 リアクションと言えるかどうか分からないが、既にイスラエル国内では、トルコに対する警戒が顕わになってきている。その事について、エルドアン大統領の長男ビラールが次のような発言をしている。

『イスラエルはトルコを恐れている、それは、トルコにはイマーム・ハテプ高校があり、イスラム教をきちんと学んだ者が、多数いるからだ。彼らはいま政府の、あらゆるポストに就いている。』。

 イマーム・ハテップ高校は、イスラム教学を教える高校であり、そこを卒業した者の多くは、トルコ各地のモスクの、イマームになっている。エルドアン大統領もこの高校の卒業生だ。ビラールに言わせると、この高校を出た者は『ウンマ=イスラム共同体あるいは国家』とは何かを良く知っているということだ。

 エルドアン大統領は公然と、イスラエル非難をしており、必ずしもイスラエルにとって、友好的とは言え無い。しかし、エルドアン大統領の義理の息子ベラト(経済大臣)は、イスラエルとの経済関係をこれまで、良好に保ってきてもいる。

 今回のトランプ大統領による、ムスリム同胞団敵視発言は、エルドアン大統領にとって、相当ショックであったろう。彼はシーシ大統領によって打倒された、モルシー政権を支えていたからだ。

 今後トランプ発言を受けて。どうイスラム世界が変化していくか。注目に値する。それだけムスリム同胞団の国際的な、影響力は大きいのだ。少なくともサウジアラビアやアラブ首長国連邦は、トランプ発言を歓迎しよう。両国はムスリム同胞団に対する締め付けを、強化しているのだから。