『エジプトのアルアハラム紙IS特集掲載』

2019年5月27日

 エジプトのアルアハラムという新聞は、最も古い歴史を持つ新聞だが、今回そのアルアハラム紙が掲載した、IS(ISIL)に関する記事は、読みごたえがあるようだ。まず記事が長いことと、内容が多岐にわたっているためだ。

 まず、記事には『ISはシリアとイラクで敗北した後、戦略を変えたのか』というタイトルが付けられ、最初に三つの疑問が提示されている。曰く、ISはどうなるのか、次いで外国から参加した戦闘員の地位はどうなるのか、そして最後は、世界の何処がISの新たな基地になりうるのか、といった具合だ。

 IS(ISIL)はイラクとシリアで敗北した、と言われているが、世界規模で見た場合、4月と5月前半で実行したテロ作戦は、482件だというのだ。その攻撃範囲は、西アフリカからアジアに広がり、9つの地域に分散している。

 この攻撃で死傷者は、2800人にも上っているのだ。こういった現実を見ると、とてもIS(ISIL)が終わった、とは判断できまい。IS(ISIL)は確実に新たな方針で、活動しているようだ。

 この新たな戦略は、何時どのようにし、始められるのか、そして、明確に何を意味しているのか、最後には国際社会はどう対応できるのか、ということだ。これまでIS(ISIL)は何度と無く、その形を変えてきている。そもそもの起こりは、アルカーイダからの分離であり、2014年には多くのグループが、アルカーイダから抜けて、バグダーデイの下に集まった。

 彼らは新たな戦場を求め、攻撃を開始することになった。次いで、バグダーデイは最初の演説をしている。この演説は戦闘員にモラルと、方向性を与えたと言われている。最後に戦闘員の戦術作戦目標、攻撃目標の明確化とある。

 現在ISISIL)はリビアや西アフリカで、作戦を展開している。ここでは攻撃即逃亡という戦術が、用いられている。そうすることによって、友軍の被害を最小限に留める方針なのだ。

 加えて、IS(ISIL)は三つの作戦を用い始めた。第一に軍治安部を攻撃し、敵を脅威に貶める、ソフト・ターゲットを攻撃する。例えば無防備の村落だ。そして作戦実行早期撤退だ。また暗殺もこれを行う。

 宗教的言辞を使い、大衆を味方につける。加えてゲリラ戦を展開する。戦闘員の移動は夜間に行い、敵に察知されないようにする。戦闘員は地域の治安部隊や、警察軍人に偽装し、活動する。

 略奪を行い資金を蓄えること、アルカーイダが踏襲した作戦を利用すること、安全な脱出ルートの確保は重要だ、としている。

 最後にはしかるべき地域を占領し、そこをイスラム国家と定める。ゲリラ的に作戦を実行し、そこに留まらず跡を残さない、ハイウエーなどの周辺に潜伏し、彼ら軍人や警官を捕まえ人質とする。

 これらの作戦は元軍人によって、作成されたものであり、彼らは最初、アルカーイダに所属し、後にIS(ISIL)に移った者たちだ。

 さてこのIS(ISIL)の新方針は、どこまで世界での活動範囲を、広げていくのであろうか。少なくとも、イラクやシリアでのIS(ISIL)の敗北で、IS(ISIL)が終わったとは、考えるべきではない、ということだ。