先に実施された地方選挙の結果は、与党AKPにとって屈辱的なものであった。なかでもイスタンブール市での敗北は、完全にエルドアン大統領の頬を、殴るようなものであった。それは彼の政治家としての生い立ちがイスタンブール市であり、イスタンブール市は彼にとって、政治のホームグランドだったからだ。
エルドアン大統領は彼の親友ユルドルム氏を、イスタンブール市長候補に立て、多分確実に勝利できる、と言っていたのであろう。しかし、ユルドルム氏は僅差で野党CHPの、イマモール氏に敗れる結果となった。
そこでエルドアン大統領は、何とか選挙結果を覆すべく、選挙には不正があったとして、票の再計算をさせたが、やはりイマモール氏の勝利だった。次いで、エルドアン大統領はイスタンブール市の、選挙投票やり直しを主張したが、それは通らなかった。
結果的にエルドアン大統領は、大はじをかいたことになる。その後は何の打つ手もなかった。トルコの6大都市で、5つの都市の市長ポストを失ったのだから、今後の国内政治は、やり難くなるのではないのか。
例えば、エルドアン大統領に対する反対行動でも、いままでのようなわけには行かず、放任される可能性が高くなろう。イスタンブール市では議会が開催されると、聴衆が大挙して押しかけ、新しい政治への期待が、いかに高いかということを、まざまざと見せ付ける結果となた。
エルドアン大統領は彼自身の、将来への不安を、だいぶ前から抱いていたようだ。彼が大統領に就任してからは、それ以前の大統領と比べ、逮捕され投獄される者が、増えている。
例えば、彼の前のギュル氏が大統領の時期には、この種の大統領や与党AKPに対する非難で、逮捕された者の数は233人だったが、エルドアン大統領の時期には、3221人と13倍にも増加しているのだ。
その逮捕理由は、大統領非難や与党非難ということだから、たまったものではない。高校生までもが逮捕投獄されているのだ。エルドアン大統領はもし大統領職を追われることになれば、確実に逮捕され、汚職、拷問その他の罪を問われ、家族一同が刑務所に送られる、という不安を抱いているのではないのか。
その典型的な現れは、エルドアン大統領が決め込んでいる、ギュレン・グループに対する異常なまでの警戒心と、敵対心であろう。このギュレン・グループを逮捕するために、トルコ政府は関係諸国に圧力を掛けて、引き渡させたり、ギュレン・グループが運営する学校を閉鎖しても来た。だが、欧米や日本ではそれが機能していない。これら先進国ではトルコによる、経済へのダメージは無いし、法に則って判断対応しているからだ。