『エルドアン大統領大負け』

2019年4月 1日

 これほど酷い負け方をするとは、さすがのエルドアン大統領も、予想していなかったであろう。当初、首都アンカラを落とすのではないか、という予想が出ていた。

 結果は、トルコ最大のイスタンブールも。落としたのだ。トルコの6大都市のうち、5都市が野党候補の当選となっている。

 トルコ国営アナドール通信は、選挙速報報道を、途中で止めてしまった。多分、エルドアン大統領が何らかの工作をして、ユルドルム候補を当選させるだろう、という読みと、エルドアン大統領に対する、配慮からだったと思う。

 ユルドルム氏は首相を勤めた人物であり、極めて著名な人物であった。開票途中では、5000票差でユルドルム氏側が勝利した、と言っていたのだが、投票の最終結果を見ると逆で、野党CHPのエクレム・イマモ-ル氏が、27000票差で勝利している。

 まだ投票結果が発表される前の段階で、エルドアン大統領はイスタンブールの選挙に敗北したことを、認めていた。彼はもう勝ち目はない、と思っていたのであろう。潔いと言えば、潔いということであろうか。

 一時期は選挙結果について、不正な投票があったとして、野党の当選者を外すということも、報じられてきたが、ここまで来ると、そうも行かなかったのであろう。世界のマスコミは既に、与党AKPの敗北を伝えているのだから。

 今回の投票がらみでは、マラテヤ市で野党党員2人が、殺されているが、投票は比較的穏やかに、進められたような気がする。それは与党支持の国民が、エルドアン大統領に愛想が尽き、馬鹿らしくて、殺人などする気には、ならなかったためかも知れない。

エルドアン大統領は投票結果が出た後、与党AKPを支持してくれ、与党候補が当選した幾つかの街に、感謝の言葉を述べている。穏やかな挨拶だったようだ。それは、あるいは、彼が今後危険な立場に立たされることを、予感しているからかもしれない。

 従って、今回はあまり思い切った、選挙結果を覆すような、汚い工作は、しないかも知れない。そんなことをして、トルコ国民が怒り、暴動にでもなれば、エルドアン大統領は汚職で貯めた金を持って、国外逃亡せざるを得なくなるか、国内で捕まり、リンチで殺されるかもしれないからだ。

エルドアン大統領支持者たちの割合は、今回の投票で約40パーセントであることが分かっている。まだ挽回のチャンスはある、とエルドアン大統領は踏んでいるのかもしれない。誰でも苦しい情況に追い込まれると、ありもしない希望を、抱きたいものだ。