『シリアクルド安全地帯など語る』

2019年3月 9日

 シリアのクルド組織がアメリカに協力して、IS(ISIL)掃討に尽力してきたことは、アメリカ側から高い評価を得ている。そのため、今後のクルド対応が、難しくなってきていることも確かだ。

 アメリカはクルドの安全を守る協力をし、しかも、トルコとの関係も、維持しなければならないからだ。そうしたなかで一番の問題は、トルコが主張している、トルコとシリアとの国境に、創設する安全地帯だ。

 トルコ政府は自国の安全を維持するためには、安全地帯が必要だというが、クルド側にすれば、トルコが造る安全地帯は、結局、シリア北部の市町村も含むことになり、悪影響を受ける。従って認められないというのだ。

 それではクルド側はどのような解決策が、取られるべきかというと、国際組織がこの国境地帯の安全を、監視すればいいということになる、クルド側は既に、安全は確保されており、トルコの進出の必要はないと言っている。

 トルコが造る巨大な安全地帯は、結局のところ、トルコ軍がクルド側を攻撃するための、ものだということになる。それは、アメリカ軍のシリアからの撤退で、より鮮明になろう。アメリカは200人の軍人を残し、後はシリアから撤退する、と言っているからだ。アメリカは合同軍つまりヨーロッパ軍を、15002000人程度駐留させることによって、それをカバーするという考えだ。

 アメリカとトルコの間では、安全地帯問題を含め、地域での協力関係が討議されているが、その詳細に付いては、クルド側には何も知らされていない。明らかなことは、エルドアン大統領の言う安全地帯は、トルコだけが守るということだ。その結果は、クルドが弾圧されるということだ。

 クルド側はシリア政府と交渉しているが、それは自治権の獲得、トルコからの攻撃に対する防衛支援、文化的、政治的活動の容認などだ。この点に関して、シリア政府はいまのところ、しかるべき答えを出していない。

 クルドとアメリカとの関係は、アメリカがクルドをトルコよりも支持しようし、シリア政府もトルコとの領土問題があることから、クルドを支援しよう。そうなると、トルコは安全地帯の自国だけの設立と管理、という構想は困難になろう。ロシアもシリアとトルコが、安全地帯は共同で管理しろ、と主張している。