アメリカの議員二人が、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子をギャングだと非難した。彼らに言わせれば、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が進めたイエメン戦争、国内民主派の投獄、女性に対する拷問、カタール制裁、イランに対するアラブ湾岸諸国の結束破壊、そしてカシオギの暗殺などは、ギャングの行うことだというのだ。
現在、アメリカとサウジアラビアとの関係は、芳しくなく、トランプが大統領に就任して以来、駐サウジアラビア・アメリカ大使は、まだ任命されていない。それは2017年以来のことだが、これはまさに、異例中の異例な事態であろう。
こうしたことから、アメリかの下院議会は、サウジアラビアに対する支援を止めるべきだ、という決議を生み出している。しかし、トランプ政権はサウジアラビアへの支援は必要だ、と主張している。
ジム・リッチ議員は議会の委員長だが、アメリカは明確な警告メッセージを、サウジアラビア政府に送るべきだ、と主張している。それは、レバノンのハリーリ首相の拘束、イラン対応へのアラブ湾岸諸国間結束の破壊、などを挙げているが、共和党のボブ・メネンデス議員もムハンマド・ビン・サルマン皇太子をギャング呼ばわりしている一人だ。
また、共和党のマルコ・ルビオ議員は、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子にかかわる、長大な犯罪リストを作成している。
こうしたアメリカの動きは、今後、アメリカとサウジアアラビアとの関係を、悪化させることになることは明白だが、アメリカの意図はどの辺にあるのだろうか。トランプ大統領はあくまでも、サウジアラビアとの取引を、重視するつもりであり、カシオギ事件は無視、という立場をとってきていた。
しかし、ここまで来ると、トランプ大統領がムハンマド・ビン・サルマン皇太子をかばうことは、難しくなるのではないか。そうした一般的な推測よりも,アメリカがサウジアラビアの体制を、破壊することを目論んでいるのではないか、という陰謀論を取りたくなる。
アメリカは中東地域に大国を創らない、という方針であり、これまでイラクのサダム体制や、リビアのカダフィ体制を打倒し、シリアの体制破壊を図り、エジプトを経済的に追い込み、イランを弾圧し続けている。
サウジアラビアはかつて、中東とアラブのなかの大国、と言われていた。それは述べるまでもなく,サウジアラビアの石油による、莫大な収入が国際政治に、大きな役割と影響を及ぼしうるからだった。
最近発表された世界の軍事力リストにも、サウジアラビアは9番目の軍事大国として登場している。それはアメリカのサウジアラビアに対する警戒なのか、陰謀の為の偽旗作戦なのかは、いまの段階ではまだ分らない。