イランのザリーフ外相は、トランプ大統領と金首領との、会談の失敗について、コメントしている。それは、イランとアメリカとの交渉が、不発に終わった経験から語られたものであり、興味深い。
ザリーフ外相に言わせれば、トランプ大統領はこの金首領との会談に、真剣に取り組んではいなかった、ということだ。確かにそうかもしれない、45分の会談の予定が、30分過ぎた段階で、トランプ大統領は会談の席を蹴って、退出している。
トランプ大統領は自分の希望を述べ、それにいい返事が無かったということで、会談の席を蹴って出たのだが、それは金首領側から言わせれば、北朝鮮側に対する見返り無しに、全面降伏しろということだったのであろう。
イランはアメリカとの核交渉を経験する中で、アメリカとの交渉とは一方的な命令型であり、交渉という形にはなっていなかった、と受け止めているのであろう。その結果は、アメリカは核拡散を検討する合意から、一方的に飛び出し、その責任をイランに押し付けている。
そうしたアメリカのやり方は、何もトランプ大統領に限ったことではなく、これまで歴代のアメリカ大統領が、同じ手法を取ってきていたようだ。大国アメリカの傲慢なスタイルが、他国との交渉でも通用する、と考えているのであろう。
ザリーフ外相に言わせれば、トランプ大統領はベトナムに観光旅行をし、世界の悪者金首領とツーショットを撮ることと、そして、それを世界にばら撒くことが、目的だったということであろう。
そして、そのトランプ大統領のベトナム訪問と、金首領との会談決裂は『強い男トランプ』のイメージを、アメリカの選挙投票者の間に、広めたということであろうか。それはこの北朝鮮との交渉に続く、ベネズエラ問題でも如何なく発揮されるのではないか。
ベネズエラ問題はアメリカが同国の、石油資源奪取を目的とするものであり、決してベネズエラの独裁体制を打倒する、といったものではない。しかし、残念なことに世界の先進諸国の多くは、トランプ大統領の力による、他国の資源略奪を支持しているのだ。そのなかには日本も含まれている。
ザリーフ外相の『トランプは始めから金と真面目に、交渉する気は無かった。』という発言は、まさに正鵠を射ていよう。少し我々も冷静に客観的に、公正な立場からこの会談の失敗を、検討する必要があるのではないのか。その場合、北が日本にとって敵対国であるか、友好国であるかは問題ではない。