トルコの元首相だったアハマド・ダウトール氏が、新党を結成することを表明した。この新党は今年の9月に、正式に立ち上げられることになり、それまでは試し運転の時期、とでもいうものであろうか。
この新党の設立は、少なからぬ動揺を与党AKPのなかに、生み出しているのではないかと思われる。なぜならば、この新党には元大物の閣僚たちが、名を連ねているからだ。アリー・ババジャン元財相や、メフメト・シムシェク氏もそのメンバーだとされている。それ以外にも大物政治家に、アハマド・ダウトール氏から声が、かかっているものと思われる。
ギュル元大統領については、これまで彼自身が新党を結成する、という噂が流れているが、今回の新党結成には、いまのところ参加していないようだ。だが、今後のトルコ国内情勢によっては、ギュル氏の新党への参加も、十分ありうることであろう。
アハマド・ダウトール氏もギュル氏も、エルドアンにいわば、煮え湯を飲まされ、冷たくその権力の座から、追放されているからだ。新党の結成はその意味では、まさにエルドン大統領に対するリベンジということであろう。
アハマド・・ダウトール氏が今回この時期に,新党結成を言い始めたのは、勝算ありという判断に、基づくものなのか、単なる反エルドアン感情からなのか、興味の湧くところだ。もちろん、アハマド・ダウトール氏は十分に計算して、新党結成を始めたことであろう。
現在トルコの経済は、破綻の一歩手前であり、国民の不満も失業や物価高で、高まっている。そうしたことが国民のAKP離れと、新党支持への流れに、なるかもしれない。既に,AKPの現役議員10人以上に、アハマド・ダウトール氏から、働きかけが行われた、という情報もある。
アハマド・ダウトール氏は元大学教授であり、比較的身辺は清潔であろう。アリー・ババジャンは良家のご子息で、これもまた金に絡む悪い噂は、ほとんど出なかった。そうしたことを考えると、新党には期待が持てるかもしれない。
問題は、そこでエルドアン大統領が、この新しい政治のうねりを、どう止めるかであろう。強権を使う、新党幹部のスキャンダルを、でっちあげるなど、あらゆる方法がとられると思われる。
エルドアン大統領はこの新党結成の、噂が流れだした段階で、『新しい汽車に乗りたがる者はいる。』と余裕を見せているということだが。