『エルドアン大統領NZで怒り心頭・非難轟々』

2019年3月21日

 

トルコのエルドアン大統領は、内外で起こる事件で、頭のなかが大分混乱してきているのではないか、と思われるような出来事が、連続して起こっている。NZ(ニュージーランド)で起こった事件では、犯人がトルコに何度も入国していたこともあり、ターゲットはトルコだった、と言い出している。

 確かに、犯人ブレントン・タラントが書き残した、声明文のなかには、オスマン帝国によって奪われた、東ローマ帝国のコンズタンチノーブルを奪還せよ、といった部分があるようだ。そして、この犯人ブレントン・タラントはトルコを東西に分割し、ボスポラス海峡の東だけをトルコに与え、西側は奪還すべきだとも、書いているということだ。

また、こうした話の延長線上で、犯人ブレントン・タラントはエルドアン大統領も、狙っていたとエルドアン大統領は、主張している。そして、ヨーロッパに居住するトルコ人は、厳重な警戒をすべきだ、と語っている。犯人はヨーロッパに居住するトルコ人を、殺せとも声明文のなかには、書いているようだ。

 エルドアン大統領はこの犯人に激怒しながら、西側諸国はイスラムホビアを捨てろと語り、冷静な対応を呼びかけているということだ。しかし、何処が冷静なのか分かりかねる部分が多い。

 エルドアン大統領の強硬発言は、他の面でも見られる。トルコ在住のクルド人がモスクに発砲したと非難し、クルド対策を強化すべきだと語っている。その事は来る選挙に合わせての、発言であろう。

エルドアン大統領はそれだけではなく、NZのテロ事件のテープを各地で行われる、大統領演説会で流し、犯人ブレントン・タラントだけではなく、西側の卑劣な策謀、と非難しているようだ。これは外国から非難されるだけではなく、トルコ国内でも非難を受け始めている。与党AKPの議員のなかにも、このエルドアン大統領の選挙運動の進め方に、非難の言葉が出てきているのだ。

 与党AKPはモスクのミナレット(尖塔)にも与党の旗を吊るしている。これなどは宗教を政治に利用する典型的な例であろう。NZのテロ犯ブレントン・タラントで、国民の間に怒りを募らせ、それを自分の側の票に結び付けよう、という作戦であろう。

 エルドアン大統領は首都アンカラや、トルコ最大の都市イスタンブールの市長選挙では、敗北したくないと強く望んでいようが、経済の悪化はその可能性を高めているのではないのか。例え、全国規模で勝利しても、この二つの都市で落とせば、敗北は明らかになろう。

 エルドアン大統領の与党AKPに対する支持が、先月の世論調査では、確か35パーセント程度と出ていたと思うが、経済の悪化のなかでは、もっと支持率は下がっているのではないかと思われ、そのためにエルドアン大統領は、あせりを感じているのであろう。

 失業率の上昇、物価の上昇、インフレの上昇、国内外国企業の操業停止や撤退など、悪材料が揃い過ぎている。これでは、パンだけでエルドアン大統領支持に回っていた、もの言わぬ国民の支持も低下しよう。エルドアン大統領には絶対に減らない、35パーセントの支持層がいる、と言われてきていたが、それはパンを食わせてくれるから、ということが理由であったろう。

 国民にパンを食わせられなくなれば、その国のトップは絞首刑台に、引き出されるのが運命だ。その日が迫っているのか。エルドアン大統領の内心は、大きな不安で一杯になっているのではないのか。