『IS敗退後のシリアなど地域の今後』

2019年3月29日

シリアでのIS(ISIL)の敗退が確定的となった。もちろん、そうは言っても残存戦闘員による、小規模なテロ攻撃は続いている。しかし、大所が片付いた今では、その後どのようにシリアと周辺地域を、コントロールしていくかが、問題となっている。

 つい最近、シリアの首都ダマスカスでイラン、イラク、シリアの国防トップ・クラスの会議が開催された。そこではシリアの領土問題、シリアとイラクの国境の戦略的カイム・ブカマル・ボーダー問題などが、話し合われたようだ。

 これらはSDFに対する直接的なメッセージ(警告)であり、トルコへの間接的メッセージであった。トルコについては、シリアのイドリブ地域を、トルコが手下のFSAを使って、コントロールしていることに対する、反発があるのだ。

 しかも、そこにはアルカーイダの、ハヤート・タフリール・シャーム組織も、陣取っている。これらすべての問題が、IS(ISIL)敗退後の問題として、重要視され始めている。もちろん、シリア政府にとってはアメリカの傘下で活動してきて、シリア北東部を占領支配しているSDFを、どうするかという問題もある。

 SDFはシリア北東部、ユーフラテス川の東側はかれらの自治区だ、と認識しているのだ。それは、アメリカがバックについているからという、安心感からであろうが、今回のイラン・シリア・イラクの軍高官の会議の結果、そうもいかなくなりそうだ。イラクはアメリカとの関係を悪化させ、ロシアとの関係を強めているからだ。

 アメリカはイラクにある軍事基地を守り、イランを監視したいと望んでおり、そのことからある程度、イラクとは妥協が必要と、考えているかもしれない。イラクのアサーイブ・アハルルハック組織の代表カイス・ハザリは、アメリカ軍を追放すると語っている。

 イラクの外相が最初に訪問した国はロシアだったが、それは、イラクがロシアを重要視していることの、証であろう。ロシアのショイグ国防相が、アサド大統領と討議したテーマは、イドリブだった。

 そのことはトルコのシリアにおける存在が、時間切れになることを、意味しているのではないのか。シリアのトルコに対する我慢が、そろそろ切れそうでもある。ただ言えることは、シリア政府のSDF締め付けが厳しくなることは、トルコにとって有利であろう。トルコはSDFが軍事侵攻してくることを、懸念しているからだ。

 そこで、イドリブがバーゲニング・チップになるのではないか、ということが語られている。イドリブとトルコの主張する安全地帯とを、交換するということだ。そのことはSDFを、追い込めることになるからだ。SDFはアルバグーズでの勝利を土産に、シリア政府と自治の交渉に、入りたいと考えている。しかし、シリア国防相は『シリアには一つの軍しか置かない。』と語っている。つまリ、自治は認めないということだ。

SDFやロジャバ(クルドの政治組織)は、シリア政府との交渉を望み始めたのだが。