『イラン・ザリーフ外相の辞任』

2019年2月27日

 イランのジャワード・ザリーフ外相が辞任した。これは少なからぬショックを、西側世界と中東世界、そしてイラン国内にもたらしているようだ。何故ならば、彼が辞任した理由というのは、イラン国内の強硬派の圧力があったからだ、と彼が辞任理由として、明確に語ったからだ。

 このことはレバノンの社会進歩党の党首で、政治家であるジェンブラット氏も『ザリーフ外相は強硬派の圧力の犠牲になった。』と語っている。イラン事情に通じる人たちの間では、強硬派がザリーフ外相に、反対していたことは、よく知られていたのであろう。

 つまり、今回のザリーフ外相の辞任で、イラン国内、政府内部に強硬派と穏健派の勢力があり、それが対立しているということを、内外に明確に知らしめることになった。ザリーフ外相の穏やかな表情は、見る者をほっとさせる、いい効果があったと思うのだが。

 彼はその笑顔で、アメリカ・ヨーロッパとの核問題の交渉や、シリア支援、ヨーロッパとの関係強化を、果たしてきていたのだ。つまり、危険な橋を何度と無く彼は渡って来ているのだ。その過程で、ザリーフ外相が強硬派に嫌われることは、何度もあったろう。

 彼が辞めたことで、もし強硬派の人物が新外相に就任した場合、その外相の顔は、国際政治の場で、あまり歓迎されないかもしれない。多くのイランの政府高官は、押しなべて暗い、厳しい表情をしているからだ。(元駐日大使アラーグチ外務次官氏が、次の外相になるかもしれない。)

 イランの議会の議員の多数が、ザリーフ外相の辞任に反対し、ロウハーニ大統領に対して、抗議の意思を伝えている。それがイラン議員の、相当数であったことから、ロウハーニ大統領も動かざるを得なくなった、ということだ。

 ロウハーニ大統領はザリーフ外相の辞任を、受け付けないと述べ、彼の活動を高く評価し、辞任に反対している。しかし、それは余り強い意志表明には、なっていない感じがするのだが。

 ロウハーニ大統領のチーフ・スタッフは、ロウハーニ大統領がザリーフ外相の、貢献を高く評価していると語り、『イランの外交は一つであり外相は一人だ。』と語っている。だが、高官の辞任に際して、その人物を称賛することは、必ずしもその職に留めることを、意味してはいない、退職手当というか、餞別のようなものでしかないかもしれない。

 

 これで、今後ロウハーニ大統領が、ザリーフ外相の辞任を、撤回させることができるのか、イラン政府内や権力機構の中で、ザリーフ外相を守り切れるのかが、ロウハーニ大統領の力量を、推し量ることに繋がろう。

 

 それは、強硬派と言われる革命防衛隊と、ハメネイ師との関係が深いことを考えると、ロウハーニ大統領とハメネイ師との、権力闘争の様相を呈してくる可能性がある、ということでもあろう。