トルコはいま極めて難しい局面に、立たされているのかもしれない。動きが取れない状態にあるのだ。シリア問題でもトルコ国内問題でも然りだ。そこでエルドアン大統領がどう動くかによって、彼の将来は決まってきそうだ。
シリア問題では、トルコのエルドアン大統領はいままでアメリカ軍に、シリアのマンビジュから撤退しろと言い続けてきた。そうでなければ、シリアに侵攻したトルコ軍と、アメリカ軍が衝突するぞ、と警告していたのだ。
それは極めて元気のある発言で、大国のトルコが大国のアメリカを、脅したということなのだ。それを聞いて愚かなトルコ人たちは大喜びした『トルコはアメリカも恐れない大国だ!』ということであったろう。
しかし、現実はこれとは全く異なるのだということは、日本人なら誰でもわかろう。アメリカはトルコがあまりにも、アメリカ軍のシリアからの撤収を要求するの、でそれではアメリカに代わって、トルコがシリアのIS(ISIL)を打倒してくれる、ということにした。
アメリカはあっさり、シリアからの撤収を認め、トランプ大統領は『トルコがIS(ISIL)を退治してくれるので、アメリカ軍は撤収させる。』と言ってのけた。そしてアメリカ軍のシリアからの撤収は既に始まった。
アメリカはシリアに400人ほどの、治安維持部隊を残し、それ以外はイラク経由で、帰国させると発表したのだ。あわてたのはトルコだった。それまでの発言とは打って変わり、トルコのアカル国防相が『シリアに力の空白を作らないでくれ。』と要請し始めたのだ。
さて、トルコの現状はといえば、トルコにはいま大軍をシリアに送るほどの、経済的な余裕は無い。IMFはトルコ経済がシリアに、軍を派兵をする以前から、厳しい情況にあり、IMFの関与が必要だ、と主張している。
しかし、それは国家が危機的財政状態に、あるということになるので、エルドアン大統領はIMFのトルコへの関与を、拒否すると叫びまくっている。それはしかし、時間の問題かもしれない。
トルコでは外国の同国への投資が、激減しており、トルコに持っていた不動産も売り始め、投資資金は引き上げ始めている。ドリームランドのような、お城の形をした高級住宅は、誰も買わず、放置されている始末だ。
トルコの経済情況の目安であった、外国人への高級住宅販売は、激減しているのだ。それに加え、政府がトルコの建設業者に発注した、大型建造物に対する支払いが滞っており、業者は泣いているのだ。
日本のトルコへの進出企業も、生産中止を発表している。トヨタ日産ホンダなどがそのようだが、トルコ政府は『ホンダは出て行かない』と宣伝している。イギリスがEUから抜けるために、ヨーロッパ経済は激変しており、トルコもそのとばっちりを、これから本格的に受けることになろう。
こうなるとトルコの経済はますます厳しいものになろう。トルコ・リラの値下がりは同国にインフレと失業をもたらし食料なかでも野菜の値上がりは、極度なものとなり、政府は仲介業者や農民に責任をなすりつけ、見せ掛けの政府による野菜販売所を、設けたりしている。
外債の元本返済は外貨で行われる、従ってトルコ・リラは今後も下がる、ということであろう。ヨーロッパの金融専門家たちは、数年でトルコ・リラは現在の5.3から6.7程度まで下がると見ている。
これではエルドアン大統領と、与党AKPに対する支持は減り、3月31日の地方選挙では、AKPが大負けするかもしれない。もちろん、エルドアン大統領は選挙結果をごまかし、勝利した形にしようが、その事は国民の暴動を、呼び起こす危険があろう。つまり、いまのトルコ政府与党AKPは前進も後退も出来ない、という事ではないのか。