今年のトルコの地方選挙は、与党AKPにとって、厳しいものになりそうだ。それは、トルコの経済状態が、悪化していることに、主たる原因がある。失業率10パーセント以上上跳ね上がり、インフレ率は20・35パーセントを超え、中小企業の倒産が、目立って増えている。
こうしたことから、これまで多かったヨーロッパ諸国の、トルコへの投資も激減し、外貨事情は悪化している。これではトルコ企業は経営が厳しくなるし、トルコ・リラの値下がりで、借入金の利子や元本の返済が、苦しくなってもいるのだ。
物価値上がりのなかでも、食料品の値上がりがひどいために、政府は直接生産者から買い取り、利益無しで消費者に売る店舗を、開いているほどだ。なかでも、ジャガイモやナスなどの値上がりはひどく、100パーセントを超えている、と言われている。
今回の選挙とは異なり、エルドアン大統領が大統領選挙に挑んだ時は、50パーセント以上を得票したし、その前にあった統一選挙では、AKPが49.8パーセントという、高得票率を記録している。今回の選挙でもそうなるだろう、とエルドアン大統領AKPも、楽観していたのではないか。
だが今回は、既に述べたような理由から、AKPが得票するのは、35パーセント程度だと言われている。もちろ、AKPは得票をごまかすだろうが、選挙結果にあまり下駄をはかせれば、国民にバレることになり、猛反発を生む危険性があろう。その場合、若者が暴徒化する危険性があろう。
そこでAKPがとり始めたのは、ネガテブ・キャンペーンだ。エルドアン大統領が率先して、野党の非難を始めているのだ。例えばこういった具合にだ。『CHPやIYI党は、クルドのテロリストPKKやギュレン・グループと、結託している。』といった具合にだ。
エルドアン大統領に言わせると、『野党のCHPやIYI党、そしてサアダト党は、ギュレン・グループとPKKの、コントロール下にある。』というのだ。彼に言わせると、街中で起こった女性警官襲撃事件は、CHPによるものだったというのだ。
またCHPはクルドの政党DHPと、結託しているとも語っている。しかし、CHPはDHPと共闘関係には無い、とこのエルドアン大統領の非難発言を、を否定している。
エルドアン大統領にとっては、今回の選挙は必死の選挙運動、ということであろう。もし、与党AKPが敗北すれば、その後に続くのはAKPへの攻撃であり、エルドアン大統領は汚職、強権発動などで逮捕され、投獄される危険性があろう。
エルドアン大統領の主張する、ギュレン・グループとPKKによる野党支配は、でたらめであろう。だが、CHPがDHPと連携することはあるうる話であろう。今後、エルドアン大統領は舌鋒鋭く、野党攻撃を続けていくだろうが、それがプラスに働くか、マイナスに働くかは、まだ分からない。