いま世界ではユダヤ人に対する、差別敵視が広がっているようだ。多分、その第一の原因は景気の後退に、あるのではないかと思われる。景気が悪化し、生活が苦しくなってくると、決まってユダヤ人は大儲けしている、とか、ユダヤ人は経済を牛耳っている,という話が出てくる。次いで出てくるのは民族主義だ。我が国の国民は優秀なのに、こんな生活を強いられているのは、誰かの陰謀によるものだ。多分、ユダヤ人が悪徳な金儲けをしているからだ、という話しが出てくる。
アラブはさておき、ヨーロッパのオランダ、ドイツ、ノルウエー、イギリス、そしてカナダなどで、反セムが拡大しているのだ。トルコのエルドアン大統領の最近の発言にも、反ユダヤの匂いがす
る。このため、トルコとイスラエルは関係が、悪化している。
最もイスラエルをかばい、支援しているアメリカでさえ、国民の中には相当数の、反ユダヤがいることも事実だ。ユダヤ人の墓石にハーゲン・クロイツの落書きがされ、ユダヤ施設のドアに同じマークが、描かれていることもある。
ユダヤ人が世界の経済を、牛耳っているとは思わないが、相当の力を有していることは、事実であろう。アラブ湾岸諸国は石油大国ばかりであり、巨万の富を持っているが、ここの国々はいずれも、人口が少なく、軍隊は弱小だ。
そのため、アラブ湾岸諸国は常に、外部からの恫喝を受けている。世界の景気が悪くなったり、特定の国の経済が悪化すると、決まってアラブ湾岸諸国が標的にされる。現在では経済苦に苦しむイランが、サウジアラビアを狙っているとして、サウジアラビアは第一級の警戒をしている。
イスラエルやユダヤの場合も、理屈は同じなのではないのか。ユダヤ人の人口は少なく、イスラエルは小さな国家だ。しかも、周囲は敵対的アラブ諸国によって、囲まれている。
そうなると、ユダヤ人の結束が最も重要、ということになり、そのために、イスラエルはホロコーストをことさらに、世界に訴えるのであろう。しかし、それは同時にユダヤ嫌いを、世界中で拡大することにも繋がる、両刃の剣なのだ。
ホロコースト問題を取り上げるとき、決まってドイツはやり玉に挙げられるし、ほとんどのヨーロッパ諸国も程度の差こそあれ、ユダヤ人虐殺の片棒を担いでいたと非難される。
結果は、ドイツに始まり、ヨーロッパ全体に反ユダヤが広がる、ということになる。今回も反ユダヤが始まったのはドイツだったが、今ではヨーロッパ全域に広がっている。