ロシアの情報によれば、シリアのクルド組織SDFが、トルコ主導で進められようとしている、トルコ・シリア国境地帯への、安全地帯設置構想について、反発し始めている。これは当然の反応であろう。
トルコが進めようとしている安全地帯は、シリアの領土内部であり、そこにトルコが主導で、安全地帯を設置すれば、当然管理はトルコ、ということになろう。そして、トルコ政府が反YPG、SDFであることから、安全地帯に設けられる難民キャンプには、彼らは入れないことになろう。
シリアのクルド・ミリシアの主張では、安全地帯はシリア政府の管轄になるべきだ、というのだから正論であろう。だが、アメリカはトルコを主体にして、この安全地帯設置を考えている。シリアとアメリカとの関係を考えれば、これまた当然の帰結であろう。
シリア・クルドの政治家アドラール・ハリール氏は、安全地帯は国連によって、運営されるべきだと主張している。そうでなければ、シリアの主権が侵され、クルドの主権も侵されることになる、ということだ。この安全地帯の構築には、合同軍なかでもアメリカの支援が、欠かせないということは自明であろう。トルコのチャウソール外相も、筋が通らないとクルドの主張に、反発している。
他方、ロシアはというと、シリア北部のシリアの主権は、犯されるべきでないとし、シリア北部地域はシリア政府と、シリアの治安軍に渡されるべきだ、と主張している。その流れの中では、ロシアはシリア政府とクルド・ミリシアの対話が、始まったことを歓迎している。いまの段階では、残る未開放地域は、イドリブだけとなっているが、それも近く解放されよう。
さて、今後の動きはというと、トルコとシリア、そしてクルドが話し合いに、入るかもしれない。だがその場合、トルコ側はクルドの交渉への参加を、拒否するのではないか。そうなれば、シリア政府がクルドを含めて、代表する形になろう。
そのシリアとトルコとの交渉を、アメリカとロシアが支援する、ということになろうか。この交渉は簡単ではないかもしれないが、ここまで来れば、進めないわけにはいくまい。
もし、この交渉でトルコとシリアの、冷たい関係が改善されれば、両国にとっては幸いであろう。もちろん、いままでもトルコとシリアは、地下水脈を通じて、交渉をしてきている。従って、不可能ではないということだ。