『トルコのクルド対応・物事は常識に帰結』

2019年1月16日

  アメリカのトランプ大統領と、トルコのエルドアン大統領という、世界的にも有名な毒舌二人が、クルドの問題をめぐり怒鳴りあっていたが、結局、常識の線に帰結したようだ。当たり前であろう。アメリカもトルコも、戦争などしたくないのだ。

 これだけ兵器の値段が高くなり、一度戦争をしようものなら、どれだけの出費につながるのか、想像もつくまい。戦争をすることは、国家を疲弊させ、破綻させることになるのは必定だ。

 アメリカ軍のシリアからの撤退後、シリアのミリシアをどう処遇するかをめぐり、トルコとアメリカとは、言い争いしていたわけだが、結局、常識の範囲に収まったようだ。

 前にも書いたが、トルコとシリアの国境沿いに、安全地帯を設定し、そこからはトルコ軍も、クルドのミリシアを攻撃しないし、クルドのミリシア側もトルコに越境攻撃は、かけないということだ。

 少なくとも、この合意は当分の間は守られよう。しかし、一定の時間が経過すれば、特にクルドからのトルコへの攻撃が、起こるのではないかと思われる。それは、トルコ国内にいるクルド労働党(PKK)の意志が、クルド人全体に強く働くものと、思われるからだ。

 今回のトルコとアメリカの、クルド庇護をめぐる合意は、大いに歓迎だが、これにはトルコを歓喜させる、幾つもの合意が隠されている。まず、今回の合意でトルコはシリアの領土96000平方キロを、支配することができるようになるわけだ。

 トルコとシリアの国境は3000キロあり、それの32キロ内部を安全地帯と設定した。つまり、そのエリアは96000平方キロということになる。それは日本の総面積のおよそ、4分の1にあたるのだ。

  もちろん、実際的にはクルド人の支配地域の、国境地帯だけということになり、それは3000キロではなく、2000キロになるかもしれないが、それでも広大な地域ということになろう。しかも、シリアの北部は地下資源の豊富な地域でもある。

 トルコは安全地帯を確保し、そこを開発し、人が住めるような状態にした後、トルコに逃れたシリア難民を、安全地帯内部に帰すつもりでいる。これは国際的な人道問題であることから、トルコは国連やEU,アメリカも巻き込み、安全地帯の開発を進めることになろう。

 EUにしてみれば、もしこのトルコの構想に賛同し、一定の援助金を出さなければ、トルコに居るシリア難民を、大量に送り込まれる不安があることから、喜んで(?)資金を出すことになろう。アメリカは資金を出すのと同時に、トルコと組んで、開発事業に乗り出し、ビジネスチャンスをつかもう。アサド政権にも少しはうまみを分け与えて、賛同させるということではないか。

エルドアン大統領の粘りは結果として、多くのメリットをトルコにもたらしたようだ。