『ポンペオ国務長官は何を根拠に楽観』

2019年1月13日

 アメリカのポンペオ国務長官は、アラブなど中東の9カ国を訪問し、その後に成果の一部を、口にしている。訪問した国はトルコに加え、エジプト、ヨルダン、オマーン、クウエイト、イラク、サウジアラビア、カタール、バハレーン、アラブ首長国連邦などだ。

 つまり、ほとんどの主要アラブ諸国を、訪問したということだが、その主題はアメリカ軍のシリアからの、撤退であったはずだ。昨年の12月に、トランプ大統領は『全てのアメリカ兵をシリアから引き上げ、帰国させる。』と宣言したのだが、物事はそう簡単で、無さそうだ。

 こうしたことから今回の主要訪問国は、トルコであったと思われるのだが、ポンペオ国務長官は『話し合いは上手く行った、希望が持てる。』といったコメントを、訪問先のアラブ首長国連邦で語っている。

 彼の受けた印象では、トルコ軍がシリアのクルド・ミリシアを守り、武力衝突はトルコ軍とクルドのSDFやYPGとの間には、起こらないというのだ。それは少し虫のいい話ではないか。

何度も書いてきたが、クルドのミリシアはトルコのクルド・テロ組織PKK(クルド民主党)と繋がっており、このPKKはトルコで、4万人以上のトルコ国民を、殺しているのだ。そしてPKKと連携するYPGは、国際的にもテロ組織とされているのだ。

その仇敵であるクルド・ミリシアを、トルコ軍が守るというのは、どうも納得がいかない。だからいままで、アメリカ軍がシリアから撤退した後に、クルド人の虐殺が起こる、という予測が出ていたのだ。

ポンペオ国務長官は彼の訪問が、成功であったことを印象付けたいために、根も葉もない話をしたのではないのか。加えて、彼が提案した来月のポーランドでの、中東会議も成功するとは思えない。

10カ国が参加して開催される予定だが、その参加国は何処なのか、エジプトやサウジアラビアは参加しても、それでは肝心の問題に関する立場を持った国が、出て来ないのではないか、といわれている。

もし、この会議を成功させたいのであれば、当事国のシリア、トルコ、クルドの参加は絶対必要であろうし、イラクも然りであろう。アメリカ軍がシリアから撤退した後には、IS((ISIL)が再台頭してくることが、予測されるからだ。

ポンペオ国務長官には世界の流れが、見えていないのではないか、。あるいは、あくまでも無責任に、持論を披瀝しているだけなのか。こんな無責任な人物が、世界最強国家アメリカの国務長官、というのは怖い感じがするが。