『今回はエルドアン大統領に理あり』

2019年1月 9日

 アメリカのトランプ大統領も、トルコのエルドアン大統領も、共に一癖も二癖もある政治家だ。それだけに二人の発言はこれまで、国際社会の中でいろいろな問題を、引き起こしてきていた。

 今回はアメリカからジョン・ボルトン特使がトルコを訪問したが、彼の言動はエルドアン大統領を、激怒させたようだ。当然であろう。ボルトン特使はトルコ側に対し、これまで4万人以上も、トルコ人を殺した敵である、クルドを守ると言ってのけたのだ。

 アメリカに言わせれば、難しいシリアでのIS(ISIL)掃討作戦で、クルドのYPGSDFは協力してくれたので、アメリカは彼らを守る義務がある、ということであろう。

 確かにそれも理屈だが、だからと言ってNATOの同盟国である、トルコの国益と安全を、無視していいという理屈にはなるまい。ボルトン特使はトルコに対して、クルドを守るのでトルコ軍はクルドを攻撃しないように、と言ったというのだ。  

そして、それがアメリカ軍のシリアからの撤退の、条件だと語ったということだ。それとは別に、トルコ側はシリアからアメリカ軍が撤退するのであれば、アメリカ軍の基地をトルコ側に引き渡すか、あるいはすべて破壊しろ、と言ったということだ。 

それは当然であろう。アメリカがクルドのミリシアを放置し、しかも、軍事基地を居抜きで渡せば、クルドのミリシアは強化され、その後のトルコ軍との戦闘を、優位に運べるだろう。しかも、その基地にはアメリカ軍が、大量の武器弾薬を、残していくことになろう。

こうしたアメリカとトルコの意見の相違から、エルドアン大統領はボルトン特使に会うことを拒否し、トルコの閣僚数人がボルトン特使に会って、話は終わった。つまり、ボルトン特使のトルコ訪問は、何の成果も生まなかったということだ。

 そこで疑問なのは、今回のボルトン特使の発言は、トランプ大統領と十分に話し合って、持ち込んだものかどうか、ということだ。ボルトン氏はアメリカ政府内でも強硬派で通っている人物であり、トルコ如きの意向を伺うつもりは、なかったろう。

彼はトルコに話し合いに来たのではなく、命令をしに来たのであろう。彼はアメリカ軍が今後も、シリアに留まることを望んでいるのだ。いまの段階となれば、アメリカにとってトルコの軍事力は、邪魔にこそなれ必要ではあるまい。だから、無茶苦茶な意見を述べたのではないのか。

トランプ大統領が次の選挙で多忙ななか、ボルトン特使はいい加減な意見調整で、中東を観光旅行気分で、歴訪しているのではなか、とさえ思える。このボルトン特使の失礼極まりない発言を受け、今後トルコがしっぺ返しに出ると思われるが、それがシリアへの本格的な軍事侵攻になるのか、あるいは全く他の手段になるのかは予想できない。

ただ今のトルコはロシア、中国、イランと良好な関係にあり、アメリカと離れてたとしても、大やけどをすることはあるまい。