『ボルトンのシリア・クルド対応トルコは如何に』

2019年1月 7日

 アメリカのボルトン氏がイスラエル・トルコなどを、訪問することになっているが、彼の発言はイスラエルにとっても、トルコにとっても、ショックなのではないか。

 イスラエルに対しては、アメリカにはイラン対応を、する気がないので、任せると言ったようだ。つまりひどい言い方をすれば『イランが危険だと思うなら、イスラエル自身が対応すべきだ、アメリカはイランに、何の痛痒も感じていない。』ということではないのか。

 トルコに対してはと言えば、アメリカ軍のシリア撤退は、その後のことを考え、撤退することはするが、今ではない、数か月後かあるいは数年後だ、と言ったのだ。そしてアメリカ軍が撤退する条件とは、トルコがシリアのクルドを攻撃せず、彼らの安全を保障するということだ。それ無しには、アメリカは軍をシリアから撤退させるつもりはない、と言ったのだ。

 イスラエルについていえば、イスラエルの強気発言はあくまでも,アメリカがしりぬぐいをしてくれる、守ってくれるということによるものだった。確かに、イランはイスラエルにとって、不安要因ではあろうが、いまのイランは、イスラエルが単独で軍事対応できる、レベルではない。

 非常に高度な武器を、自国生産し、大量に保有できるように、なっているのだ。しかも、イランはイスラエルを取り囲む形で、友軍を育成している。レバノンのヘズブラが北から、シリアは東から、そしてイエメンのホウシ派は、南からイスラエルを、包囲しているのだ。

 加えて、イラクのシーア政権も、イスラエルにとって決して、安全な存在ではあるまい。このような状況では、イスラエルは単独ではイランに武力攻撃を、かける決断はできまい。ボルトン氏はそのことを分かっているのであろうか。

 トルコについて述べれば、トルコがクルド勢力を打倒することは、国家の命運がかかっていることであり、放置することは出来ない。アメリカがクルド(SDFYPG)と組んで、IS(ISIL)に対応してきていたことは、事実であろうが、だからと言って、アメリカの意向に沿って、トルコがクルドの安全を、保障することなどできまい。

 そんなことをしたら、トルコ国内は大騒ぎになろう。それはエルドアン大統領の考えと、真正面から対立するものだ。トルコでは1984年のPKK結成以来、今日までの間に、4万人を超える国民が、クルド人に殺されているのだ。

 今回のボルトン発言と、トランプ大統領のいい加減なシリア対応、クルド対応は、友好国を怒らせるもの以外の、何物でもあるまい.これではトランプ大統領は、トルコに対して『もう寄ってくるな、ロシアへ行け。』と言っているのと、同じではないか。これに対してエルドアン大統領が、どのようなしっぺ返しをするか見ものだ。