トルコにとって、昨年のカシオギ事件は,同国が手に入れた、最もラッキーなカードであったろう。この事件が起こることによって、トルコのサウジアラビアに対する立場は、完全に逆転し、トルコはサウジアラビアに対して、どれだけでも圧力が、掛けられるようになった。
アメリカに対しても、カシオギ事件の真相全てを知る国として、優位に立ったし、アメリカの望む、サウジアラビアへの圧力行使でも、アメリカの協力できる国は、トルコ以外にはあるまい。アメリカはトルコにサウジアラビアへの圧力を掛けさせ、自分はよき仲介者として振舞いながら、間接的に圧力を掛けることに、成功している。
トランプ大統領はこの辺のことを、『アメリカにとっては商売第一だ。』と公言している。つまり、できるだけ多くの武器を、サウジアラビアに売りたい、ということであり、そのためには、サウジアラビアとの関係を壊したくない、ということであろう。
アメリカの議会はこうしたトランプ大統領の、サウジアラビア対応を非難しているが、時間が経てば忘れられる、ということであろう。その結果、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子に対する非難も、世間から忘れ去られるのであろうか。
トルコにとっていい出来事は、アメリカのトランプ大統領が、シリアからの撤兵を決めたことだ。そうは言っても、関係各国のこともあり、早急な撤退は無理だろうが、少なくともエルドアン大統領の面子は、守られた形だ。
ただ問題は、トランプ大統領がシリアからの撤退は、エルドアン大統領の助言に従ったのだ、と言っていることだ。もし、これが失敗すれば、エルドアン大統領にも責任が、かかってくるということだ。
加えて、トランプ大統領はシリアでのIS(ISIL)掃討作戦は、トルコの責任だと言っている点だ。そうなると、トルコは大軍をシリアに送り込み、難しい戦闘を展開することになり、相当の犠牲が出ることを、覚悟しなければなるまいし、戦費も嵩もう。
エルドアン大統領はこのことを承知しており、『トルコ軍がシリア作戦を展開するのは、アメリカ軍がシリアから撤退した後だ。』と語っている。それには当分時間がかかろうし、完全撤退をするとは思えないので、トルコは充分に時間稼ぎが出来、派兵をしない口実も出来る、ということだ。
エルドアン大統領はあるいは、トランプ大統領よりもほら吹きなのかもしれない。2019年は各国の元首が、自国に都合にいいほらを、吹きまくる年なのであろうか。