アメリカの大統領が決めることは、未だに大きな影響を、世界中に与えているが、今回トランプ大統領が決定した、シリアからの撤退は、どのような結果を、もたらすのであろうか。シリアにはいまだにIS(ISIL)が残留しており、その戦闘員の数は、2万人とも6万人とも言われている。
IS(ISIL)の戦闘員の実数を知る者は、ごく一部の軍の情報関係者、だけなのであろうか。IS(ISIL)の実態を掴むのは、彼らが市民のなかに潜り込み、一般人のような生活をしているために、分かり難い。いわゆるスリーパーと、呼ばれる形で、潜伏しているのだ。それがアメリカ軍の撤退で、再度活発に動き出す、可能性が高いのだ。
トランプ大統領のシリアからの撤退について、BBCのジャーナリストなどは、危険な判断だと見なしている。もちろん、イギリス政府もフランス政府も、今回のトランプ大統領の突然の、シリアからのアメリカ軍の撤退について、賛成していない。
イギリスやフランスが事のほか、IS(ISIL)の今後について、神経を尖らせているのは、IS(ISIL)がヨ-ロッパ諸国に潜入してくることを、警戒しているからだ。その最も危険な立場に立たされているのが、フランスでありイギリスなのであろう。
つい最近、アルジェリア政府は同国南部国境から、アルジェリア入りを希望しているシリア難民を、締め出すことを決定した。それは難民のなかに、IS(ISIL)を始めとするイスラム過激派が、含まれているからだ。彼らはアルジェリアに入ることに加え、アルジェリアからヨーロッパに渡ることを、考えているようだ。
シリア難民がわざわざ、アフリカ中央部まで異動して、アルジェリアに入り、そこからヨーロッパを目指すというのは、少し不自然であろう。彼らにどのようなルートが、開かれているのかについては、知りようも無い。
アメリカがシリアから撤退して一番困るのは、クルドのミリシア組織SDFやYPG、PYDなどであろう。彼らはいままでアメリカの保護の下にあったし、IS(ISIL)との戦闘の矢表に、立たされて来ていたのだ。それがアメリカ軍に抜けられたのでは、無防備な状態になったのと、同様であろう。しかも、クルドには今後、シリアに進出して来るであろう、トルコ軍が待ちかまえてもいるのだ。
こうした情況から、クルド各派はシリア政府と交渉をし、何とか共闘体制を生み出したい、と願っているようだ。それは可能性としては、高いのではないか。シリア政府にしてみれば、トルコ軍が入ってきて、国中を荒されたり、領土の一部を奪われたのでは、たまるまい。
トルコも必ずしもいい状態に、あるとは言えまい。トランプ大統領が言うように、クルドもシリア軍もIS(ISIL)も、みんなトルコが対応するというのだから、相当の犠牲が出ることを、覚悟しなければなるまい。IS(ISIL)はスリーパーであり、特攻攻撃を仕掛けてくる。しかも、トルコ軍は広いシリアの領土の、全部を見なければなるまい。それは人的犠牲も軍事費も、莫大なものになろう。