時衛隊が海外に基地を持っている話は、一般の日本人は関心を示さないし、知りもしない。しかし、平和ボケしているといわれる日本も、きっちりと要衝を押さえているようだ。
自衛隊の海外基地のひとつが、アフリカ大陸北東端にあるジブチにあるのだ。そこには暑さの中で、がんばっている自衛隊員がいる。このジブチは紅海の出口、バーブルマンデブ海峡に面している、小さな国なのだ。
このバーブルマンデブ海峡地域の海は、海賊が出没することで知られ、多くの外国の貨物船が、被害に遭ってきていた。そのため自衛隊なども派遣され、海上の安全確保に参加しているのだ。
このバーブルマンデブ海峡の重要性は、それだけではない。サウジアラビアから積み出される石油が、通過するところであり、ヨーロッパ諸国の貨物が、アジア側に通過する海路であり、その逆でもある重要な海路なのだ。
このためバーブルマンデブ海峡をどの国が支配するかで、勝負が決まる部分がある。例えば1990年にイラク軍がクウエイトに軍事侵攻して、クウエイトという国家が一時期消えたことがある。
この危機ではアメリカが率先し、クウエイト解放のための合同軍が結成され、合同軍はサウジアラビア領内に集まった。そして、1991年アメリカを始めとする合同軍は、イラクの占領軍を破り、クウエイトの主権は回復されたのだ。
この湾岸危機時に、サウジアラビアに集まった合同軍は、いずれもが地中海から紅海に入り、バーブルマンデブ海峡を通過して、サウジアラビアに入っているのだ。もちろん、紅海からサウジアラビアに入った部分もあるが、大型艦船はこのルートを通じ、ペルシャ湾に入るホルムズ海峡を、通過していったのだ。
その重要なバーブルマンデブ海峡と、紅海地域を守るために、アメリカも中国もフランスもイタリアも、ジブチやエリトリアに軍事基地を構えているのだ。それが最近では、アメリカと中国とのせめぎあいが、激しくなってきている、ということだ。もちろんロシアも軍事基地を構えている。もともとアフリカの角と呼ばれる、アフリカ大陸北東端部は、ソ連のテリトリーだったのだ。
中国は2017年6億ドルの費用と、10000人の兵員をジブチに送り込み、基地を建設している。中国政府はこの動きについて、地域の平和と安全を守る目的のためだ、と説明しているが、それは表向きの話であり、将来はアフリカ諸国を、影響下に置くためであり、それらの国の市場と資源を、押さえるために他ならない。
それはアメリカもロシアも、フランスもイタリアも同じであろう。例外的な人道支援目的と安全だけ、というのは日本だけであろうか。それを世界は信用するだろうか。