『シリアは各国の草刈場か?希望が始まったのか?』

2018年12月31日

 シリアの内戦はほぼ終わったようだ。そのため、地域各国がシリアに対する対応を、大きく変更しつつあるようだ。例えばUAEやバハレーン、カタール、オマーン、ヨルダンといった国々は、シリアにある大使館を再開する方向に、動き出している。

 バハレーンはシリアを、地域大国として認めるべきだ、と言い出しているが、このバハレーンの発言の裏には、サウジアラビアの意向が働いていよう。サウジアラビアはアサド政権を打倒する、と言っていたわけだから180度方向を変えた、ということであろう。

 ヨルダンの動きは、シリアとの経済関係拡大に、第一目的があるようだ。隣接する国同士が協力することになれば、その効果は大であろうし、シリアはまだ未開発の遺跡が沢山あり、観光開発しようと思えば、大きな可能性を持っている。しかも、シリア料理は旨いことでも有名だ。

 他方、地域の国々のシリア進出には、これとは異なる傾向も見えている。その筆頭はトルコであろうが、トルコはシリアなかでもシリア北部への、影響力を拡大する方針であり、大軍を国境地域に送り込んでいる。

 これはシリア北部を拠点とする、クルド勢力に対する軍事的圧力の、行使であろう。クルド人たちはなんとかシリア国内での、自治権の獲得を願うと同時に、トルコ東部を奪取し、将来のクルド国家の設立を、夢見ていたからだ。

そのクルド人の夢は、アメリカ軍が早期に撤退したため、当分進展しそうには無い。アメリカはクルドのSDF,YPG,PYDを使い、シリアへの軍事的影響力を維持していたのだが、突然撤退する形となった。これではクルド勢力は、トルコ軍と対等に闘うことは出来まい。

イラクもトルコ同様に、シリアに対する影響力を、拡大するつもりのようだ。その主張は、あくまでもIS(ISIL)を掃討する、ということにあり、イラク軍はシリアとの国境地帯に集結している。これでは、各国はなかなかイラクの動きを、非難し難いのではないか。

イランもまた、シリアに確固たる地歩を、固めたいようだ。それはシリアがイランの構想する、シーア派地域の拡大と、サウジアラビアの包囲にあろう。イラン、イラク、レバノンのヘズブラ、シリアのアサド政権、イエメンのホウシ派は、いずれもシーア派であり、サウジアラビアとは宗派を異にしているのだ。

ロシアはどう動いているのであろうか。当然のことながら、ロシアは今後のシリアに対する、各国の動きを調整し、自国に有利な形にしていこう、と考えていることであろう。トルコのシリアに対する軍事攻勢では、ロシアが待ったを掛けているし、イランの軍事台頭にも、ブレーキを掛けている

ではアメリカはどうかというと、アメリカは撤退後のシリア対応に、まだ明らかな方針を示していない。言えることは、イラクに新設した2基地を使い、シリアに何時でも再進出できる形を、維持していくということであり、アメリカにはシリア再台頭の意思が、明らかだということであろう。こうして考えてみると、新年もシリアをめぐる活発な、ポジテブ、ネガテブな動きがあるということだ。