『米軍撤退後のトルコシリアなどの分捕り合戦』

2018年12月27日

 アメリカ軍はシリアに公式には、2000人いたと言われているが、実質は1万人を超えていたようだ。その事はアメリカ軍のシリアからの撤退の後には、多くの未だに使えるものが、放置されているものと思われる。

 それらは食料であったり雑貨であったり、カメラやラジオなどの電化製品であったり、武器であったりしよう。アメリカ軍は壊れた武器をご丁寧に、自国に持ち帰ることなどあるまい。

 しかし、物不足の生活をしている人たちには、壊れた電化製品も武器も修理して、使えるようにすることができるのだ。以前そんな光景をカイロの街中で、見たことがある。どう見ても日本人にはもう使えない、と思われる電化製品がそこでは修理されていた。もちろんパーツとしても、売れる価値があるのだ。

 そのことに加え、アメリカ軍が支配していた地域は、その土地に価値がある。 地下資源があるところを狙ってアメリカは支配し、基地を建設していたのだ。

 そのようなことがあるために、いまシリアのアメリカ軍占領地域は、各国各派の、草刈り場のような状況になりつつある。トルコ軍が入り、シリア軍が入り、トルコの意向を受けるFSA(アラブ人が主体)アメリカ軍の配下だったSDF(クルド人)も入っている。

 なかでも、アメリカ軍基地のあるマンビジュは、各国各派ともに強い関心を示している。ここはユーフラテス川東岸の油田地帯に近い地域だからだ。かつてはIS(ISIL)がこの辺を支配し、石油を密売して軍資金を稼いでいたのだ。

これからはアメリカ軍が撤退したことをいいことに、トルコが自国領土のように大きな顔をして、軍事行動を始めることであろう。トルコはシリア軍とは比べものにならないほどの、武器を持っているはずだし、兵士の訓練も行き届いていよう。

 そのトルコ軍とまずクルドのYPGが武力衝突しよう。トルコとシリアとの間には、あるいは密約が出来ているかもしれない。そう思われるのは、ロシアがシリアと強い関係にあり、ロシアはトルコとも良好な関係にあるからだ。

 今回の陣取り合戦で一番不利なのは、あるいはクルドのYPGかもしれない。これまではIS(ISIL)対応で、シリア政府とYPGとの間には、ある種の密約があると言われていた。シリア政府はYPGIS(ISIL)対応で協力してくれるならば、シリア北部の自治権を、クルド人に与えると約束した、と言われていた。

 しかし、いまは状況が変わったろう。一番シリア政府が妥協しなければならないのは、クルドではなくトルコではないのか。そうなると、クルドのトルコに対する憎しみは何倍にもなり、激しいクルド(YPG)とトルコ軍の戦闘が、展開されるのではないか。そうはなってほしくないものだ