『トランプ大統領の無責任が来年を暗くする』

2018年12月25日

 突然、トランプ大統領がシリアから撤退すると宣言し、後はトルコに任せると言ってのけた。そもそも、トランプ大統領がシリアからの撤退を決断したのは、エルドアン大統領がせかすからだった、と語っている。

確かに、エルドアン大統領は、何度と無くシリアのマンビジュからの撤退を、アメリカ側に要求していた。そうでなければ、トルコ軍がアメリカ軍と武力衝突する危険性があるからだ、ということだった。

アメリカのあまり国際関係を考えない国民にとっては、アメリカ軍のシリアからの撤退は、軍人の家族への、最大のクリスマス・プレゼントだとして、歓迎されよう。しかし、状況はそれほど簡単ではないし、アメリカの責任を問われることになろう。

アメリカ軍が本当に、全面撤退するようなことになれば、それまで保たれていた軍事バランスは、大きく変わり、武力衝突が関係各国や、ミリシアとの間で起こる、ということだ。

 例えば、一番最初に考えられるのは、トルコ軍とSDFYPGの、武力衝突であろう。SDFYPGもクルド勢力であり、反トルコの立場にある。そして、トルコ政府はYPGSDFを打倒したい、と考えているのだ。

 もし、トルコがYPGSDFの存在を放置すれば、将来、トルコの東部地域がクルド人によって奪われ、クルド国家が出来上がる危険性があるのだ。従って、トルコ軍はどうしても、このクルド勢力と戦わなければならない、ということになる。

 シリア政府にしてもクルド勢力を、のさばらせておくわけにはいくまい。クルドのYPGSDFは、アメリカの支援を受け、武器を大量に与えられ、十分に戦闘する能力を、持つに至っている。クルド勢力はシリア北部を支配し、トルコ東部と結び付け、クルド国家を作る意思を、強めているのだ。こうしたことから、シリア政府はクルド勢力を、打倒しなければならない立場にある。

 ロシアはどう動くのであろうか。ロシアはこれまでシリアのアサド体制を、支援してきている。それは、シリアロシアが軍港を持っているからに、他ならない。しかし、状況の変化は、ロシアにトルコを選ぶのか、シリアを選ぶのかという、難しい問題を投げかけているのではないのか。

 結果的には、ロシアはトルコもシリアも、自分の側に引き付けることになりそうだが、それはアメリカとの軋轢を高めることにつながり。ウクライナ問題などで、アメリカともめることになろう。

 こうしたことから、来年は相当国際政治軍事問題が、複雑になるのではないか、と思われる。フランスもシリアの旧宗主国という立場と国益から、アメリカに対し厳しい注文を、付け始めてもいる。