『激しさを増したイスラエルのアラブ切り崩し』

2018年11月26日

 

 ここに来て、イスラエルによるアラブ諸国への接近が、目立つようになって来ている。イスラエルは建国以来、達成できていなかった、近隣のアラブ諸国との関係を、構築する意志を、固めたのであろう。

 ネタニヤフ首相のオマーン訪問後、バハレーンへの訪問が、近く実現する見通しだ。最近になって、オマーンの外相はイスラエルという国家は、現実に存在するのだから、無視すべきではない、といった内容の発言をしている。

 これは明らかにこれまでの、裏の関係ではなく、正式にイスラエルとの外交関係を開く、前兆であろう。また、バハレーンもその方向に、あるのではないのか。そもそも、アラブ湾岸諸国の多くは、既に実際的なイスラエルとの、外交関係を始めている。ドバイもカタールもしかりであろう。

 サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子の、イスラエル接近はよく知られた秘密だった。彼は自身がイスラエル訪問をした、という話もあるし、政府高官をイスラエルに、派遣していることは確かだ。

 ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は今回の歴訪の中で、アラブ諸国に対してイスラエルとの外交関係を始めよう、と説得する動きだと伝えられている。彼はユダヤ人のクシュネル(トランプ大統領の娘婿)とは、親友の関係にある。

 こうしてみると、アラブ湾岸諸国の中で、イスラエルとの外交を開くことを、拒否している国は無い、ということだ。それだけ世の中は変わったということであろう。これまでも、アメリカ国籍を持つユダヤ人は、何人もサウジアラビアを始めとする、アラブ湾岸諸国を訪問しているのだ。

 一体、何がここまでアラブ諸国を、変えたのであろうか。第一に言えることは、アメリカという世界最大の国家の大統領に、トランプ氏が当選し、彼は中東外交を義理の息子、クシネルに任せていることにあろう。トランプ大統領はイスラエルの首都が、エルサレムだとも認め、アメリカ大使館をエルサレムに、移転してもいるのだ。そして今は大使館の、拡張工事を進める意思を、固めてもいるものだ。

 こうまでもあからさまに、アメリカがイスラエル支持の姿勢を示したのでは、ほとんどのアラブも、真正面から反対することはできまい。なかでもイランという地域大国と、敵対関係にあるアラブ湾岸諸国は、ことさらそうであろう。

 イスラエルの強硬姿勢は、パレスチナに対してもとられている。つい最近は、エルサレムのパレスチナ市長が、逮捕されているのだ。ガザのハマースとの戦闘は、多くの犠牲者をパレスチナ側に出して、今は停戦ということになっている。

 それにもかからず、世界はパレスチナ人に対する十分な、支援や同情を示そうとはしていない。この状況に焦りを感じた、ハマースのハニヤ代表は、パレスチナ問題を無視しないでくれ、と世界に向けて叫んでいる。そのパレスチナの代表のマハムード・アッバース議長は、彼の権力基盤を固めることに、汲々としており、ハマースを敵対し続けている。

 アラブの弱さは、このマハムード・アッバース議長の行動が、典型であろう。トランプ大統領のアメリカ第一主義ならぬ、自分第一主義なのだ