『米土関係悪化の兆し明瞭』

2018年11月21日

  以前から懸念していた、アメリカとトルコの関係が、おかしくなってきているようだ。それは二人の強烈な、キャラクターを持つ国家代表が、最終的にぶつからないはずがないだろう、という判断によるものだった。

 アメリカのトランプ大統領は、暴言居士とでもいえるほど、言いたい放題を世界に対して、怒鳴りまくっている。同盟関係にあるNATO加盟国に対しては、『お前らは金も出さずにおんぶにだっこだ、もっと金を出せ。』と怒鳴り、イランに対しては『石油は一滴も売らせない。』と脅し、中国には『課税で経済を潰す。』と豪語している。まった。そのことは単に、トルコとアメリカとの関係だけではなく、近隣諸国にも大きな影響を、及ぼしそうだ。

 ソユル内相のアメリカ非難は、元アメリカ大使への非難から、始まっている。アメリカ大使はエルドアン大統領との間に、問題を起こさないために、ソフトなスタンスを取り、トルコの官僚をなだめてきていた。

 しかし、在トルコ・アメリカ外交施設のローカル・スタッフ逮捕に伴い、アメリカ大使の立場に変化が生じた。アメリカ外交施設に働くトルコ人スタッフが逮捕され、アメリカ側のトルコでの活動が、相当細かく調べ上げられたのであろう。

 ソユル内相はある男が、トルコからアフガニスタンに移動したことによって、大きな変化が起こっている、と暗に元アメリカ大使を指して非難し、アメリカの言う和平の下で、多くのアフガニスタン人が、トルコに移住してきた。

 『はっきり言おう、いま誰がアフガニスタンを管理運営しているのか、我々は知っている。』とソユル内相は暗に、アメリカが全ての問題の根源だ、と発言したのだ。

 トルコ政府は2018年に、26000人のアフガニスタン人を飛行機に乗せ、帰国させている。現在トルコには非合法移住アフガニスタン人が、90334人もいる。昨年の数は45359人だったということだ。

 ハシシの生産は2002年には、20万トンだったものが、今では90万トンに増えている。その増加率は63パーセントにも上っている。その一部がトルコにも、持ち込まれているのだ。

 アメリカはIS(ISIL)を含むイスラム・テロリストを、イラクやシリアで活用し、トルコへの狡猾な攻撃を、繰り返してきていた。エルドアン内閣はアメリカの陰謀を信じている。それがエルドアン体制を守る道具になる、と考えているようだ。

 ほとんどのトルコのマスコミは、エルドアン大統領の手に握られており、エルドアン大統領やソユル内相の語ることが、国民の間では信じ込まれている。それは、トルコ国民が毎日、エルドアン大統領と彼の部下の、閣僚たちの発言で、毒にさらされている、ということだ。

 エルドアン大統領はアメリカの、イラン制裁に真っ向から反対している、またロシア・イランとの関係も拡大している。アルカーイダ、IS(ISIL),その他のイスラム原理主義組織と、トルコは国内と周辺諸国で戦っている。

 こうした中で、トルコでは民族主義が強まってきており、エルドアン大統領の言動もしかりだ。ブランソン牧師は釈放されたが、アメリカはいまだにトルコの刑務所には、アメリカ国民が収監されている、と非難している。

 ソユル内相はアメリカの陰謀は、分り切っていることから、トルコに恩を着せるために、アメリカが賭けたPKK幹部3人への、懸賞金の善意も全く信じていない。今回のトルコとアメリカとの緊張は、行くところまで行くのかもしれない。

 この内容は、イスラエルのエルサレムポストと、トルコの反体制派のマスコミである、トルコ・ミニッツが伝えたものの概要だ。