トルコにはペリンチェクという名の人物がいる。彼については、時折この欄でご紹介したと思うが、彼はマフィアのボスであり、エルドアン大統領に対して、歯に絹を着せぬ発言をすることで、知られている。
一部では、エルドアン大統領が相当トップ・レベルの秘密を、ペリンチェク氏に握られているために、反発できないのだろう、と言われたり、エルドアン大統領はペリンチェク氏による暗殺を、恐れてものが言え無いのだろう、と言われている。
ペリンチェク氏は表向きは、トルコで最も愛国的な政党である、祖国党(VP)の党首であり、彼の意向に沿わないことがあると、大統領に対してであれマスコミに対してであれ、警告発言をしてきているのだ。
今回、ペリンチェク氏はトルコ政府とシリア政府の、秘密交渉があったことを暴露している。この内容は、ロシアのスプートニク・ニュースのインタビューに答えるなかで、語ったものだ。
その内容とは、トルコのエルドアン大統領の要望で、イランを舞台に、最近、6度トルコとシリアの政府代表が、会議を持ったというものだ。当然このことは、イランが仲介したとも取れるし、その会議にイランも参加していた、とも考えられよう。
表向きには、シリアで内戦が始まって以来、トルコとシリアは政府間交渉を、止めてきていた。しかし、裏ではトルコがFSAを結成し、反シリアの軍事行動を、展開してきていることになっているのだが、実際には、トルコ政府とシリア政府との間には、軍事協力があるということだ。
このペリンチェク氏の発言が事実だとすれば、今後、思いもかけなかったような展開が、トルコとシリアとの間には、生まれるかもしれない。そのなかには、突然のトルコ・シリア軍の共闘も、ありうるということではないのか。
そうなった場合、アメリカ軍の立場は複雑になろう。アメリカ政府は未だに、シリアのアサド体制打倒を考えているからであり、同時に、シリア国内にアメリカ軍を、長期駐留させるつもりでいる。
それは、シリア東部の石油資源を、狙ったものであると同時に、ペルシャ湾海底ガス鉱床のガスを掘り出して、シリア北部を通り地中海岸に運ぶための、ガス・パイプ・ラインを通す計画があるからだ、と言われている。
加えて、アメリカはこのペルシャ湾海底ガスの、地中海岸への輸送計画のために、クルド自治区を設立し、ゆくゆくはクルド国家にする考えが、あるとも言われている。中東では、日本などでは想像できないようなことが、毎日のように起こっている。こうした変化を、毎日注意して見続けるしかあるまい。