『中東短信』

2018年11月 6日

 今日は目立ったニュースはなかったが、あるいはと思われる記事が少なくなかった。

:第一にカシオギの子息が、サウジアラビア政府に対して、父の遺体を返せと言ったことだ。もちろん、カシオギの体は分断され、硫酸で溶かされて遺体の体を、なしていないだろうし、体の多くの部分は、もう消滅していることであろうと思われる。

 それは、カシオギの子息もそう、認識しているだろうが、この遺体返還の要求はサウジアラビアが、いかに残酷な国家であるかを、追求するためであろう。もちろん、家族の犠牲者に対する思いもあろう。いずれにしろ痛ましいことだ。こうしたことを二度と、起こさせないためには、徹底的な追及が必要であり、殺害を命令した人物を、明らかにすることが、必要であろう。

::インドがイランから原油を買い、その代金をインドの通貨ルピーで、支払うというニュースがあった。これは実に愉快な話ではないか。アメリカが馬鹿にしている国同士が、こうした協力をすることで、イランの経済は持ちこたえ、インドも制裁による被害を、受けずに済む。

 似たような自国通貨での支払いが、今後石油にかかわらず、増えていくものと思われ、その段階になれば、アメリカのドルという、世界最強の通貨の幻想は、消え去るということだ。もちろん、アメリカは幻想の通貨帝国を維持すべく、あらゆる手段を講じるであろうことは、予測できるが。

:イラクは汚染水で川魚が大量に死に、それが新たな被害を、生み出す危険に直面している。イラクの川の水の水源はトルコだが、トルコは農地の拡大のためにダムを造り、イラクやシリアに流れ込む、水の量を大幅に削減された。

その結果、ユーフラテス川などは、川底が見えるようになり、住民もその汚染水を飲んで、病気にかかっている。そこで獲れる魚は、イラク人の最も好む食べ物でもあったので、魚が死ぬまで食べていたことであろう。それがまた、健康を害していたのだ。イラク政府は対応策を考えてはいるのだが、水が無いので何ともならない状態にある。

:戦争形態は様変わりし、白兵戦はほとんど無くなり、ミサイルや戦闘機、爆撃機による攻撃が主になり、次いで通貨戦争が始まった。相手国の通貨を下落させることで、国民の不満をあおり、敵の体制を弱体化させるという方法だ。

 加えて、最近ではサイバー戦争が、幅を効かせ始めている。この分野ではイスラエルが、最も進んでいるものと思われ、イランはイスラエルによる、サイバー戦争(テロ)に悩まされている。

 マスコミを使った戦争もしかりであろう。小さい規模では、トランプ大統領の中間選挙に向けた、デマ報道の拡大があり、大きい規模では、国家間のデマ報道だ。この分野では、ロシアとアメリカがマスメデイア戦争を、展開しているし、アメリカと中国もしかりだ。

 軍隊が戦う戦争は今後規模を小さくし、ロボット兵器を使ったり、通貨戦争をしたり、サイバーテロをしたり、マスメデイア戦争をしたり、と人間はどんどん新たな戦争手段を考えていくのであろう。そのことにより世界の人たちは、見えない戦争の犠牲になって行くのだ。それは恐ろしいことだ、ということだ。