サウジアラビア政府は王権の将来と、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の将来に関わる、大問題であるだけに、カシオギ問題をどう処理するかということで、相当苦心しているようだ。
アメリカのポンペオ国務長官を受け入れ、サウジアラビア国王が話し合い、何とか傷のつかない解決案を、考えているようだ。アメリカにしてみれば、サウジアラビアが世界最大の石油油産出国であり、サウジアラビアの対応一つで、石油価格は100ドルを優に越えることになる、と言われている。
そうなれば、世界経済は大混乱から、大不況に突入することになろう。また,サウジアラビアの石油が、アメリカ・ドルを下支えしなければ、アメリカの基盤を支える、ドル体制は崩れてしまおう。
アメリカにとっては、サウジアラビアは世界最大の、アメリカ製兵器の輸入国でもあり、アメリカの国債を引き受けてくれる国でもある。つまり、サウジアラビアの体制が安定することが、アメリカの世界の覇権を支えることに、直結しているのだ。
従って、今回のカシオギ事件では、皇太子が指示した形には、例えそうであったとしても、したくないというか、出来ないのがアメリカの立場であろう。しかし、同時にアメリカは法を、重視する国であることを、世界に示さなければなるまい。ポンペオ国務長官のサウジアラビア訪問と、サウジアラビア国王との討議は、そのためのものだ。
こうしたニュースが流れている中で、サウジアラビアはアメリカに対して、シリア対応の軍資金1億ドルを提供したということだ。また、シリアの安定化のために4500万ドルの資金を、シリアに提供することも、発表している。
イエメン問題でも、イエメンのホウシ派によって、拘束されていたフランス人の釈放の努力をし、サウジアラビアはそれに成功している。それでも、サウジアラビアが企画した世界経済会議には、多くの主要銀行の頭取が、欠席を表明し、IMFのトップも、欠席を決めている。その事によって世界の良心を、示しているのであろう。
アメリカとサウジアラビアとの間では、秘密取引が成立しているのであろうが、事件が起こったトルコは、そうは行くまい。アメリカの牧師ブランソン氏の釈放をめぐり、エルドアン大統領は再三に渡り、トルコは法治国家であり、裁判所の権限が最高だ、と言ってもいた。
そうなると、サウジアラビアとアメリアが、どうトルコを黙らせるか、という課題があるということだ。サウジアラビアに出来ることは、経済援助であろう。アメリカはやはり、トルコの経済を支援することと、クルド問題やギュレン問題で、何がしかの妥協を見せるかもしれない。
そして、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、一時的にか皇太子の座から、降りることによって、関係各国の刀を、鞘に納めるのかもしれない。そうでもしなければ、世界がアメリカとサウジアラビアに対して、大反対の声を上げることになろう。