トルコのイスタンブール市にある、サウジアラビア領事館で、サウジアラビア人ジャーナリストのカシオギ氏が、行方不明になった事件は、国際問題化している。各国の判断は領事館内で殺された、ということでほぼ一致している。
トルコの警察関係者は、カシオギ氏殺害のために、サウジアラビアから15人の特殊要員が、イスタンブールを訪れ、事件後即座に出国している、と語っている。こうしたことから、トルコ政府はサウジアラビア政府に対して、事件調査のために、領事館への立ち入り許可を求めており、サウジアラビア側はそれに応えると言いながら、なかなか実際には許可が、下りていないようだ。
大使館の中で拷問を受け、最後には殺され、体はこまごまに切り刻まれた、というのだから、事実であるとすれば、もう単なる殺害ではあるまい。そのカシオギ氏は、アメリカのワシントン・ポストのジャーナリストであり、それ以外にも、名をはせた人物だっただけに、アメリカ側での反応も、激しいものとなっている。
ワシントン・ポスト紙はアメリカ政府に対して、サウジアラビアへの事件の厳しい調査を、求めている。それは当然の出方であろう。いずれにしろ事件の真相を、調べなければなるまい。
トランプ大統領の反応は、いまひとつはっきりしていないようだ。彼の一言が、今後のアメリカ・サウジアラビア関係に、大きく影響するからだ。巷では、今回の事件とサウジアラビアの、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子との関係が、噂されているが。もし、サウジアラビアの犯行であるとすれば、サウジアラビアの最高権威の、意向によるものであることは、間違いなかろう。
あるいはトランプ大統領はこの事件を、好機とみているかもしれない。トランプ大統領はサウジアラビアに対し、防衛費の負担や、武器の購入を要求しており、加えて石油の増産も要求している。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、アメリカの『サウジアラビア防衛ただ乗り論』に反発し、自分で守れると答えており、アメリカとサウジアラビアとの関係は、険悪なムードになっている。
そこでこの事件が起きたわけだから、サウジアラビアの犯行が明らかになれば、アメリカはあらゆる圧力を、サウジアラビア政府にかけられるようになる、ということであろう。
人の不幸も幸福も、それが政治駆け引きの材料になれば、そこには人情はからまなくなる。まさに冷徹な判断だけが、機能するのであろう。それが国際政治の、世界なのであろう。