トルコのエルドアン大統領はヨーロッパの主導国、ドイツを訪問した。例によって、その訪問成果は大々的に報じられたようだが、実際には何もなかったのではないか、という厳しい受け止め方をしているトルコの人たちが、多いのではないか。
メルケル首相とは楽しい朝食といった、写真が報じられたが、シュタインマイヤー大統領との会談は、最悪だったのではないか。シュタインマイヤー大統領は『エルドアン大統領の訪問を受け入れたことは、彼を認めることではない。」といった厳しいコメントをしている。
エルドアン大統領が一番気にしている、ギュレン・グループの引き渡しについては、メルケル首相もほとんど無視、といった感じだった。エルドアン大統領はドイツがギュレン・グループを匿い、保護していると非難したが、全く相手にされなかったようだ。エルドアン大統領の訪独は、トルコとドイツのテロに関する意見を、全く一致させるものではなかった。
そうしたこともあってであろうか。エルドアン大統領が帰国後に行った議会での演説では、ドイツ訪問に加え、アメリカとの関係についても、言及しているが、これも敵対的な発言が目立っている。
しかし、エルドアン大統領はアメリカとの関係を、早急に改善したいとも語っているし、ドイツを始めとしたEU諸国との関係改善や、NATOの一員としての立場を、強固なものにしたいことも語っている。
ドイツ訪問の唯一の成果は、ドイツの大手企業ジーメンスとの、協力が約束されたことであろう。ジーメンスはトルコで医療機械の、組み立てをやるようだ。つまり、ドイツよりも安価で質のいい、トルコの労働力を使う、ということであろう。
エルドアン大統領には大分焦りがあるようだ。何度も書いてきたが、失業率の上昇、トルコ・リラ安、インフレといった問題が、じわじわとトルコの経済を、蝕んでいるからだ。
最近フィッチが出したトルコ経済レポートは、トルコの20以上の銀行が経営難に、陥っていると報告している。外国からの膨大な借り入れに対する、金利の支払いや、元金の返済がトルコ・リラ安で、相当厳しくなってきているのもと思われる。
その結果は、国民の生活がどん底に陥り、彼らによる暴動が勃発する、危険性であろう。もちろ,、その時最も危険な立場に立たされるのは、エルドアン大統領その人だ。