『デルズール近郊でISとSDFが衝突』

2018年10月30日

 

 これが最後の戦いになるのか否かは、誰にも分らない。いまシリア東部のイラク国境に近いデルズールで、IS(ISIL)SDF(アメリカ軍に支援されるクルドを主体としたミリシア)との、激戦が交わされている。

SDFはこの戦闘を、優位に戦えるだろう、という予測が出ているが、それは、SDFがアメリカ軍などの、支援を受けることが、予測されているからだ。しかし、IS(ISIL)側も相当のレベルの、戦闘能力を維持していることは、否定できない。SDFにはクルドのYPGのほか、クルドの女性戦闘員で構成される、YPJも参加しているようだ。

 クルドの女性戦闘員については、だいぶ前の話になるが、コバネの戦いで勇猛さを知らしめており、IS(ISIL)の戦闘員の間からは『女によって殺されては天国に入れない。』という迷信があり、男性の戦闘員よりも、恐れられていた。

 SDFはこの戦闘の前にも、ラッカ(ISの首都)で、IS(ISIL)を掃討することに成功しており、今度の戦いはそれに次ぐものであり、ユーフラテス川の東側にいるIS(ISIL)を攻撃するものだ。

 デルズール界隈には現在、15000人のシリア人が居住しており、それ以外には、7000人が自宅を追われ、難民化してもいる。SDFは彼らの安全も戦闘時に、注意しなければならないわけであり、IS(ISIL)との戦いは、容易なものではあるまい。

 IS(ISIL)はシリア、ヨルダン、イラクの国境線沿いに、主に集まっているようであり、場合によっては、アメリカ軍の支援を受けることが可能だ、と考えているのかもしれない。過去にも窮地に追い込まれたIS(ISIL)は、アメリカ軍のヘリで、安全な場所に送り届けられ、九死に一生を得たケースが、何度もあるのだ。

 当然のことながら、今回の戦闘はシリアにとっても、重要であることから、シリア軍も参戦する意向だ。そうなると、IS(ISIL)はクルドのSDF、そしてクルドのYPG、加えてクルド女性戦闘員軍YPJ、そして、シリア軍と戦わなければならないということだ。

 戦闘がどのような結末を迎えるかは、今の段階では分らないが、IS(ISIL)にとっては、相当厳しいものになることは、明らかであろう。なお、国境沿いにイラク軍も展開しており、イラク領土へIS(ISIL)が逃亡することは困難であろう。